住宅ローンと養育費、婚姻費用
住宅ローンと養育費、婚姻費用
養育費、婚姻費用
養育費は、離婚後に発生するもので、子を養育する親側から、養育しない親に対して、子にかかる費用を請求できるものです。
婚姻費用は、離婚前に発生するもので、子に関する費用のほか、自身に関する生活費なども含むものです。
いずれも、双方の収入を見て、金額を決めていきます。
住宅ローンと養育費、婚姻費用
このような養育費や婚姻費用を支払う際に、住宅ローンを支払っていると問題にされるケースがあります。
自分が住んでいる家の住宅ローンを本人が払っている場合には、さほど問題になりませんが、相手が住んでいる家の住宅ローンを払っているという場合に、養育費や婚姻費用に影響があります。
たとえば、
- 妻・子が夫名義の家に居住、夫が住宅ローンを負担
- 夫は別居で、賃貸物件に居住、家賃を負担
というようなケースです。
妻としては、離婚をしてもマイホームに住み続けたいという希望を持つことが多いです。
このようなケースで、夫としては、二重に住居費を支払っていることになるので、その分、減額してもらいたいと考えます。
このように、住宅ローンがある場合、居住者と支払者がずれている場合には、この二重負担を、養育費や婚姻費用を決める際に考慮するとされています。
ただ、住宅ローンの支払には、全部支払終わったら、資産として残るという性質もあります。
そのため、本来、支払うことになる養育費や婚姻費用から、そのまま住宅ローン支払額を差し引けるわけではありません。
たとえば、双方の収入から認められる養育費が月額10万円、住宅ローンの支払額が8万円だった場合に、
「養育費10万-住宅ローン8万=2万円だけ払う」という主張は通りません。
では、この住宅ローンの負担をどのように考慮するのかというと、明確な決まりはないのです。
調停か審判か、または裁判所によっても違う算出方法がとられています。
住宅ローンと養育費・婚姻費用の計算例
多くの場合、収入から導かれる標準的な住居関係費を出します。
調停では、算定表の金額から、この標準的な住居関係費を差引いた金額を養育費として決める方法がとられることもあります。
たとえば、
- 算定表の金額16~18万円
- 標準的な住居関係費6~7万円
- 住宅ローン支払額10万円
というようなケースで、18万円-6万円=12万円と決める方法です。
それ以外にも、住宅ローン支払額から標準的な住居関係費を差引いた金額を特別経費として認めたり、その年間分を収入から差引いて計算したりする方法もあります。
また、別居に至る責任が大きい場合などには、住宅ローンを支払っていても減額されないというケースもあります。
標準的な住居関係費は、判例タイムズ1111号などに掲載されています。
また、多くの計算方法は、以下の本に紹介されています。
住宅ローン破綻するケースも
このように、住宅ローンを支払っている場合、養育費等の支払者からすれば、単純に養育費を支払うより、負担が大きくなることが多いです。
- 算定表の金額16~18万円
- 標準的な住居関係費6~7万円
- 住宅ローン支払額10万円
というようなケースで、18万円-6万円=12万円と決める方法がとられた場合で考えてみましょう。
家を持っていなければ、負担額は多くて18万円です。
家を持っていることで、住宅ローン10万+12万=22万円の負担となります。
この負担が増えることで、実際に、支払者側が生活ができず、住宅ローンの返済ができなくなるケースもあります。
住宅ローンの支払が止まり、自宅が競売にかけられ、支払いきれなかった住宅ローン残金について、自己破産をして支払義務をなくす、ということもあります。
養育費を請求する側も、そのような事態になることも、頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。