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FAQ(よくある質問)

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よくある質問

 

Q.医師の離婚と医療法人出資の財産分与は?

医師の離婚では、当然ながら高額の財産分与が問題になります。

さらに、医療法人の出資も争われやすいポイントです。

大阪高等裁判所平成26年3月13日判決の紹介です。

 

事案の概要

夫が医療法人を経営。

妻が、離婚及び財産分与を求めて提訴。

医療法人について、3000口の出資のうち2900口が夫、50口が妻、50口が夫の母の名義とされていました。

一審では、3000口の出資持分全てを財産分与の基礎財産としました。

その価値については、医療法人の純資産価額全額をその評価額としました。

そのうえで、寄与割合を夫6割、妻4割と評価。

これに基づいて算出した金額1億4227万2942円を、夫に対し、財産分与金として支払うようを命じました。

 

夫の主張

夫は、

医療法人の保有資産は個人資産と峻別されており財産分与の対象外、

夫の母名義の出資持分は財産分与の対象外、

出資は現実化するまでに高額な不確定的なリスクが存在するから、現時点で評価は不可能、

純資産価額の算定では、将来発生する退職金債務や税金を控除すべき、

財産分与で即時支払であれば、想定される退社時あるいは解散時までの中間利息を控除すべき、

財産分与金の支払期は退社時又は解散時とすべき

妻の寄与割合はせいぜい3割

などの点を主張していました。

夫の控訴に対して、妻も附帯控訴。

 

高等裁判所の判断

まず、出資が分与対象になるかの争点についてです。

本件医療法人設立後職員が若干増員されたものの、本件診療所における業務を継続するのに必要なものとして所有する資産や本件診療所の実質的な管理、運営実態等に大きな変化はなく、夫が形式上も出資持分の96.66パーセントを保有していることを考えると、本件医療法人が所有する財産は、婚姻共同財産であった法人化前の本件診療所に係る財産に由来し、これを活用することによってその後増加したものと評価すべきであるとしまし。

財産の由来が個人資産からのものであるとの認定。

そうすると、夫名義の出資持分2900口のほか、形式上夫の母が保有する出資持分50口及び妻名義の出資持分50口の合計3000口が財産分与の対象財産になるものとしてその評価額を算定し、夫が妻名義の出資持分について財産分与を原因として夫に対する名義変更を求める旨の附帯処分の申立てをしていないことを考慮して、対象財産の総額に妻の寄与割合を乗じて得た金額から、妻名義の出資持分の評価額を控除する方法によって最終的な財産分与額を算定するのが相当であるとしました。

母名義も含めて財産分与の対象になると判断しました。

 

医療法人出資持分の評価額

次に、医療法人の出資持分の評価額の算定方法について示されました。

算定に当たっては、収益還元法によって出資持分の評価額を算定し得るような証拠が提出されているわけではなく、純資産価額を考慮して評価せざるを得ない(最高裁平成22年7月判決参照)としています。


もっとも、医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)に基づいて設立された医療法人については、社団たる医療法人の財産の出資社員への配分については、収益又は評価益を剰余金として社員に分配することを禁止する同法54条に反しない限り、基本的に当該医療法人が自律的に定めるところに委ねており、本件医療法人のように医療法人の定款に当該法人の解散時にはその残余財産を払込出資額に応じて分配する旨の規定がある場合においては、同定款中の退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる旨の規定は、出資した社員は、退職時に、当該医療法人に対し、同時点における当該法人の財産の評価額に、同時点における総出資額中の当該社員の出資額が占める割合を乗じて算出される額の返還を請求することができることを規定したものと解されるところ、こうした返還請求権の行使が具体的な事実関係の下においては権利を濫用するものとして制限されることもあり得ると指摘しています(最高裁平成22年4月判決参照)。

また、弁論の全趣旨によれば、夫は、当分の間、本件医療法人において医師として稼働する意思を有していることが認められ、形式上も96.66パーセントの出資持分を保有する夫が、現時点において本件医療法人に対して退社した上出資持分の払戻を請求するとは考えられないと認定。

さらに、将来出資持分の払戻請求や残余財産分配請求がされるまでに本件医療法人についてどのような事業運営上の変化などが生じるかについて確実な予想をすることが困難な面があるとも指摘。

こうしたことを考慮すれば、本件医療法人の純資産評価額の7割相当額をもって出資持分3000口の評価額とするのが相当であるとしました。

収益還元法などの具体的な主張・立証がなければ、純資産額から判断するしかない、とはいえ、特殊事情を考慮し、全額を基準とするのはよくないとの判断です。

なお、妻の寄与割合は4割と認定しています。

 

 

母名義の出資持分は?

夫は、母名義の出資持分は対象にならないと主張していました。


しかしながら、本件医療法人が婚姻届出後に開設され、夫が経営してきた旧診療所を引き継いだ本件診療所を法人化して設立されたものであることなどを考慮すると、夫の母名義の出資持分をも財産分与の対象財産とするのが婚姻届出後別居時までに形成された婚姻共同財産を清算するという財産分与制度の趣旨目的に副うものというべきであるとし、これを含めて財産分与の対象になるとしました。

家族経営の法人では、出資が複数に分かれているケースも多いですが、もともとの形態が重視され、単に、他人名義だから対象外という結論にはならないことが分かります。

 

現時点での払い戻しができないとの主張

夫は現時点で本件医療法人に対して払戻を請求し得る権利はない旨主張していました。

しかしながら、夫の主張は、夫が本件医療法人において医師としての仕事に従事する意向であることから事実上払戻を請求することがあり得ないということを意味するものにすぎず、実体法上払戻請求権が存在しないものとはいえないとし、この主張は採用できないとしました。


なお、本件医療法人が実体を有する医療法人であり、医療法の規定の趣旨に照らして事実上妻による権利行使が抑制され得ることについては、原判決を補正、引用して判示したとおり純資産価額の7割相当額をもって出資持分の評価額とすることによって考慮済みであるとしています。

 

債務、税金、中間利息の控除は?


夫は、将来、本件医療法人が解散する際の価値はほとんどなく、夫に対して支払うことを検討している退職金支払債務額や清算所得に対する法人税額を控除するほか、中間利息をも控除すべき旨主張しました。


しかしながら、清算的財産分与は、別居時の財産を対象とし、時価評価すべきものがあれば、事実審の口頭弁論終結時をその基準時とするのが相当であるところ、法律的には夫が医師の資格を有する者に出資持分を有償譲渡して退社し、理事長等の地位を承継させることによって出資持分の現金化をすることも可能であることを考慮すれば、夫の主張するような本件医療法人の解散時の残余財産分配の見込額から清算所得に対する法人税額、夫に対して支払うことを予定する退職金支払見込額及び中間利息を控除した金額をもってそのまま出資持分の評価とすることは相当でないし、上記のとおり出資持分を譲渡して退社する時期を現時点において具体的に認定し得るものでもないことを考慮すれば、その時点において夫に対して支払うことを予定する退職金見込額を考慮して算定した出資持分の払戻見込額から中間利息を控除した金額をもって出資持分の評価とすることも相当とはいえないとしました。

なお、将来の流動的な要素については、本件医療法人の純資産価額の全額をもって出資持分の評価額とするのではなく、7割相当額をもって出資持分の評価額と解することによって考慮済みとしています。

将来の退職金を控除というのは難しい主張でしょうね。

税金などは主張することによって、現在の評価額を割り引ける意味はあるかと思います。

 

医師の離婚と寄与割合について

夫は、妻が婚姻届出後別居時までに就労して得られたであろう収入を試算し、その金額を踏まえて妻の寄与割合はせいぜい3割である旨主張していました。


しかしながら、民法768条3項は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与額を定めるべき旨を規定しているところ、離婚並びに婚姻に関する事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないものとされていること(憲法24条2項)に照らせば、原則として、夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当であるが、例えば、

Ⅰ 夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など、高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合、

Ⅱ 高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合などには、

そうした事情を考慮して寄与割合を加算することをも許容しなければ、財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたいとしています。

そうすると、夫が医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや、医師の資格を有し、婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して、夫の寄与割合を6割、妻の寄与割合を4割とすることは合理性を有するが、妻も家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していたことを考えると、妻の寄与割合をこれ以上減ずることは、上記の両性の本質的平等に照らして許容しがたいとして、4割と結論づけました。

その結果、財産分与の金額は、1億1640万6281円とされました。

 

 

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