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FAQ(よくある質問)

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よくある質問

 

Q.離婚時に未解決の婚姻費用はどうなる?

最高裁令和2年1月23日決定の紹介です。

婚姻費用の調停を申し立て、その後に離婚が成立したものの、離婚成立時に婚姻費用の合意ができなかったというケースで、それでは、過去の婚姻費用はどうなるの?と争われた事件です。

婚姻費用は、結婚期間中に夫婦の生活費などの負担です。

離婚成立後には発生せず、後は子どもに対する養育費があるだけです。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

動画での解説はこちら。


事案の概要

平成26年に夫婦は別居。

平成29年12月に妻から夫に対して、夫婦関係調整の調停申し立て。

離婚の申立と認められます。

平成30年1月に、それまで払っていた婚姻費用を夫が止めます。

そこで婚姻費用調停の申し立て。

婚姻費用の調停と、夫婦関係の調整調停の2つの調停がおこなわれます。

 

平成30年7月に、夫婦関係調整の調停により、離婚が成立。

ただし婚姻費用の調停については不成立。審判へ。

離婚成立時に、この婚姻費用の合意も、財産分与の合意もなし。もうお互いに請求しませんという清算条項もありませんでした。

そこで、婚姻費用の審判が残ってしまい、これをどうするのかという問題が争われました。

 

 

原審までの判断

家庭裁判所は、離婚成立しても、未払いの婚姻費用があるということで、算出した74万円の婚姻費用の支払いを命じました。

夫が不服申し立て。

高等裁判所では、離婚によって、この過去の婚姻費用は消滅したとして、支払い義務を否定という結論。

高裁は、婚姻費用分担請求権は婚姻の存続を前提とするものであり、家庭裁判所の審判によって具体的に婚姻費用分担請求権の内容等が形成されないうちに夫婦が離婚した場合には、将来に向かって婚姻費用の分担の内容等を形成することはもちろん、原則として、過去の婚姻中に支払を受けることができなかった生活費等につき婚姻費用の分担の内容等を形成することもできないというべきであるとしました。そして、当事者間で財産分与に関する合意がされず、清算条項も定められなかったときには、離婚により、婚姻費用分担請求権は消滅すると判断。

そして、事件は最高裁へ。

 

最高裁の判断

原決定を破棄、高等裁判所に差し戻し。


民法760条に基づく婚姻費用分担請求権は、夫婦の協議のほか、家事事件手続法別表第2の2の項所定の婚姻費用の分担に関する処分についての家庭裁判所の審判により、その具体的な分担額が形成決定されるものであるとの前提を確認。

また、同条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と規定しており、婚姻費用の分担は、当事者が婚姻関係にあることを前提とするものであるから、婚姻費用分担審判の申立て後に離婚により婚姻関係が終了した場合には、離婚時以後の分の費用につきその分担を同条により求める余地がないことは明らかであるとも確認。


しかし、上記の場合に、婚姻関係にある間に当事者が有していた離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由は何ら存在せず、家庭裁判所は、過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができるのであるから、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、離婚時までの過去の婚姻費用のみの具体的な分担額を形成決定することもできると解するのが相当であるとしました。

このことは、当事者が婚姻費用の清算のための給付を含めて財産分与の請求をすることができる場合であっても、異なるものではないとしています。


したがって、婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないと結論づけました。


高裁のみ違う結論

家庭裁判所は肯定。

高等裁判所では否定。

最高裁で肯定というパターンでの結論でした。

 

婚姻費用分担の審判や調停の係属中に離婚が成立した場合、離婚までの過去の婚姻費用分担請求権がどうなるのかについては、見解が分かれていました。

離婚後は、過去の婚姻費用分担請求権は消滅するという見解もあります。そのような裁判例もあります。

婚姻費用は婚姻関係の存続を前提とするので、具体的な請求権が形成される前に離婚し、婚姻関係が消滅したときには 婚姻費用分担請求権も消滅するという考えです。

この場合、過去の婚姻費用は財産分与の中で解決すべきとするものです。

また、離婚後、過去の婚姻費用分担請求権は消滅するが、財産分与請求権に性質が変化するという考えもあります。

どちらも、財産分与で考慮しましょうという話ですが、婚姻費用の審判などがある場合に、それが不適法になるのか、それとも財産分与に変更して取り扱うのかの違いはあります。

今回の高裁は、前者の立場をとったものでした。

 

 

離婚後も存続する

今回の判断は、高裁のような消滅を否定し、離婚後も、婚姻費用の請求権は残るという考えを示しました。

条文でも、消滅するという規定はないですし、離婚を成立させたら、紛争中の婚姻費用が消滅してしまうとなれば、離婚自体の合意が難しくなってしまうでしょう。

婚姻費用が解決しなければ離婚しないと主張する当事者が出てくるので、紛争がより長期化することになってしまいます。このような結論は望ましくないでしょう。

最高裁の判断が妥当と考えます。

 

この事件の夫婦に関しては財産分与に関しても合意がないということで、その後、財産分野に関しても争われる可能性た高いです。

離婚を成立させるときには、なるべく全部の問題を一緒に解決した方が良いです。

ただ、そう言っていると何も解決できないケースも少なくありません。おそらく今回の調停でもそのように考え、離婚だけ先行して成立させたのでしょう。

一つでも合意を成立させることで、その後の合意への足がかりになることもありますので、そのような狙いで合意した可能性も高いと思われます。

 

 

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