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FAQ(よくある質問)

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よくある質問

 

Q.別居していても離婚請求が否定される事例は?

夫婦関係の破綻、離婚を否定した裁判例で有名なものに、青い鳥判決と呼ばれるものがあります。

名古屋地方裁判所岡崎支部平成3年9月20日判決です。

 

事案の概要

原告と被告は昭和35年に婚姻。

2人の間には長男・長女が出生。

被告は自動車整備事業を興してより、朝8時頃より夜8時ないし10時頃まで自動車の修理、販売、整備などの仕事に精励し、顧客の要望に応え着々とその信用を得てきたものであって、仕事一筋の人間だったとされます。

日常生活は几帳面過ぎるほど真面目で、その間女性関係はなく、競輪競馬に凝ることもなかったと認定されています。

 

原告は長男長女が出生してからは家事育児に専念していたが、昭和50年頃より請求書の発送、集金、保険関係など被告の業務を手伝うようになりました。

しかし、昭和63年8月、原告は家出をし、長男の許に身を寄せました。

長男も長女も家を出て、それぞれ独立しています。

このような事情で、妻からの離婚請求が認められるのか争われました。

 

裁判所の判断


原告が家出する昭和63年8月までの約28年に及ぶ婚姻生活の経緯を検討すると、被告は中学校卒業後は赤貧の時代を脱却しようとして自動車整備工として身を立て、それを生計の手段とすることに決め、一途にその道をはげみ、原告との婚姻当初も苦労をかけさせながら自ら興した自動車整備事業について仕事に精励し次第に顧客の信用を得て、現在では別紙物件目録記載の土地建物に工場の他一家の居を構えるなどして多くの不動産も取得し、やっと人並に経済的に余裕のある生活を得るに至ったことが認められるのであると経緯を認定しています。

 

しかしながら、その仕事一途の過程の中で被告は家庭の在り方を省みることが少なく、性格的に社会性や柔軟性がなく、几帳面で口やかましく、仕事上は細かい点まで気が付く面もあって、仕事を手伝わせた長男に対しては後継者を育てようとするあまりこれにきつく当り過ぎた面や、近親者との付き合いを軽視してきた面もあり、蓄積してきた資産は自分の尽力によって得たもの、即ち被告個人のものであると考えがちであることが窺われ、これは否定出来ないところであると指摘しています。

被告に問題があったことは認定しています。

 

この点については、原告の主張する事実も認定。


原告が陳述書の中で、原告がホイルのボルトの締め付けを手伝う際、「それは済んでいる。」とちょっと意見を言うと「黙っとれ。人がちょっと手伝わせるとお前は面白くないのだろう。お前は自分の思うようにならないと、すぐふくれっ面しやがって。」などとすぐ怒り出すなど原告や家族に対して怒鳴るなど言葉遣いが荒いとか、被告の時間が当てにならないとか、近隣の者ともすぐ喧嘩になるとか、事故で入院しても原告の薬を飲むようにとの忠告も聞き入れないなど被告の性格の一端を原告が述べていることや、また子も被告は原告や家族に対して思いやりがなく、自己中心的で、仕事の手伝いをする際、意見を言うと「偉そうに、口答えするな。」と言って足蹴にし、血の出るほどの殴り合いになったことがあるなどと供述しているのは右の証であると言わざるを得ず、このような被告の態度は決して褒められたものではないとしています。

暴言、暴力的な言動も認定しています。

 

暴言や暴力に関する事情

裁判所は、これらの言動について、被告側の事情も考慮していきます。


しかしながら、被告は、

右ボルトの締め付けは当時被告が事故による治療を受け、退院直後のことで苦労して取り付けていたものであった、

原告の弟の結婚式の時間に遅刻した点はぎりぎりの時間まで仕事をしているのだからある程度仕方のないことであった、

薬の点は体に合わないので、自然に治すようにしているとか、

仕事の基本は些細なことから始まるが、一郎は基本を考えないで何度やっても定着するところがないので、「考えてやらないからだ。」とか意見を言うとすぐ反抗し怒り出す、また長男の運転は乱暴で、交差点で一時停止を怠り事故を起こし、重傷を負ったほか、追突事故を起こしたのに、夜は濃いサングラスを掛けて運転するので注意しても聞き入れるところではなかった、

たまに仕事を手伝わせようと原告を呼びに行くと、テレビを見ながら寝転んで煙草をふかしたり、コーヒーを飲んだりしている、二、三度呼ぶとやっと被告を睨み付けるようにして動き出す、こういう時原告は屁理屈を言いふくれあがる、旅行などで家を出るとき原告はほとんど支度をしてくれない、などと陳述反論書で反論していると指摘しています。


夫婦平等の原則

このような指摘をしたうえで、裁判所は、婚姻制度の歴史的背景から論理を展開していきます。

戦前の家制度で男尊女卑的な家父長のもとに妻や子供が忍従を余儀なくされた頃とは異なり、戦後の家族制度は、婚姻は両性の合意のみによって成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本にし、同居し、互いに精神的にも身体的にも経済的にも協力し、扶助しなければならないのであって(憲法第二四条第一項、第二項、民法第七五二条参照)、婚姻前からの特有財産および名実共にその一方の特有財産と見られるもの以外は、夫婦の共有財産とされ(民法第七六二条第一項、第二項)、夫婦は婚姻から生ずる費用を分担する(民法第七六〇条)とされている。つまり、男女は人間としての価値において平等であり相互の愛情と思いやりから協力し、維持していくことを理想として掲げていると思われると指摘。

 

家庭生活の特性

家族の社会生活における意義を見るに、テンニースという学者は、社会をゲマインシャフト(共同社会)とゲゼルシャフト(利益社会)とに分けている。ゲゼルシャフトとは会社とか学校とか組合のように、人がある目的のために結び合う社会のことで、そこでは人々はその目的のために結びつくのであって、一面的であると。

ゲマインシャフトとは村落とか家庭のように人々がそれ自体で結び付き、無目的に結合している社会で、そこでは全人格的に人々は結び付くと。その典型は家庭である、というのであるとしています。

難しい言葉が出てきますが、社会資本の捉え方が違うというもの。


家庭は、もといろいろな機能を果たしてきたのです。

生殖は勿論、生産も教育も娯楽も全て人々は家庭に求め、そうすることで落ち着きを感じとってきたと。

安楽の地が家庭であり、人々は家庭に安住しているだけで充分生活していけたのでした。


しかし、現在、そのような機能はほとんどがゲゼルシャフトに奪われ、家庭は生殖と睡眠とかいった数少ない機能しか果たしていないと指摘。

しかも、ゲゼルシャフトの要求は次第次第に家庭というゲマインシャフトに対して強く迫り、人々は休息の場さえ奪われ兼ねないとしています。

家庭は構造的にも夫婦と未成年の子で構成されるようになり、いわゆる核家族化される傾向にあり、ときとすればゲゼルシャフトの要求に抗し切れない場面すらあるとします。


しかし、家庭の果たす役割はやはり重要であると言わざるを得ないと展開。

ゲゼルシャフトの場でいろんな働きをして、精神的にも肉体的にも疲れ切った人々はやはりその休養を家庭に求めるのであり、憩いの場、慰めの場、思いやりの場、人間らしさを取り戻す場は家庭をおいて他にはないとします。

人間は、所詮個々としては一人の人間だけではとても生きていけない。その人生において困窮した時、疲れ切った時、難関に直面した時、やはり身近に話し合いや慰めの場を持ちたいと思うのであり、そうした最後の砦が家庭であるといってよいとのことです。

哲学的になってきました。

 

夫婦関係の変化と男性の認識


従来、主婦の持つ家事労働はきついものでした。

しかし、昭和30年代後半から昭和40年代にかけて、電気炊飯器とか、洗濯機、掃除機などの家庭電気製品などいわゆる家庭における三種の神器が一般家庭に入り込み、主婦は過酷な家事労働から解放されたと言われています。

余暇ができた時人々は考えます。

殊に、女性は夫や子供達とのこれまでの来し方を振り返り、反省し、将来の自由な世界を夢見ます。

熟年離婚などはその現代的傾向と見られるとしています。


しかし、人間は飯を食っていかなければ生きていかれないのも当然。

その家庭の経済的基盤を堅固にするのが一般的に男性の役割であったとすると、この必要条件から逃れることは容易ではなく、女性の関放に比べて男性の関放は生易しいものではないと指摘。

経済的な糧を得るには大抵の場合、人はゲゼルシャフトに依存します。

そこでは目的的合理性、ピューリタン的な節約の論理、技術の熟練性などゲマインシャフトにおける情緒的、牧歌的な原理とは異なる厳しい論理が支配するのです。

多くの男性はこの両方の生活分野の使い分けが不得手であり、ゲマインシャフト的な世界から目覚めた女性からの攻撃、すなわち妻達からの熟年離婚の要求を突き付けられて困惑するのは、厨房に余り入ったことのないこの男性達なのだと指摘します。

これから先、身の回りのこと一切は不慣れであるが、すべて自分でやって行かなくてはならない、しかし、その自信はない、といった現象が生じているのです。

 

 


この事態を防ぐには、相互に、一番身近な異性としての相手の人格を尊重し合い、趣味趣向など相手方の領域を認め合い、生活の面で役割分担があっても足りないときは何時でも助け合い補充し合うと言った工夫、また平等の立場で最も身近な最良の異性友達として付き合って行く方法を、殊に男性側にとっては考え直していかなければならないと指摘。

 

夫婦のいざこざの原因

ところで、本件における相互の弁解を見るに、夫婦間や親子のいざこざは主として被告の仕事に関連して生じていることが理解されます。

若い時から叩き上げて自動車整備士として熟達した被告にとっては、若い長男一郎の仕草はまだるっこいことであるし、素人の原告の手伝いもじれったいと感じた結果、几帳面な性格があいまって妻や子に厳しく当たったことは被告にとって反省すべき一資料というべく、自動車整備における仕事は殊に車がともすれば走る凶器と化すものであるから細心の注意を配って完全性を期して几帳面に事をなし、顧客の信頼を得べきであるが、殊に被告のように仕事場と家庭とが同一場所に存在している場合は即座にその頭の切替が必要であって、家庭団欒の場に直ちに溶け込む努力が必要となってくるのであって、これも被告の反省すべき一資料となってくるとしています。

そもそも、赤貧の時代から身を興し、ひとかどの自動車整備事業を築き上げた被告の尽力は良しとしようが、これは決して被告独自の努力ではなく、その背後には原告が現在まで、まがりなりにも家庭を支えてきたという結果として表面に現れない効果があるから被告が仕事に専念できたものであり、言いかえれば表となり裏となり原告の影の助力があったからこそ築き上げられたものであることに思いを巡らせば、家事育児、請求書の発送、集金などの助力は決して過小評価されるべきものではないから、決して別紙物件目録記載の不動産などの資産や営業資金は被告が出したものであるから被告個有のものであると言うべきではなく、前記のとおり名実を問わず夫婦の共有財産と考えるべきであり、食わしてやっているとか、被告の預金を持ち出して原告が家出したという被告の考えは改めるべきであるとしています。

 

 

自動車整備事業が軌道に乗り経済的には安定した現在、被告としては前記の諸点を十分に反省し、性格を見直し、仕事の面より、むしろこれから先の家庭の幸福と安泰の方に目を向けるべきであろうとします。

以上は要するに、ゲゼルシャフト的な生き方をゲマインシャフト的な家庭生活に持ち込んだ被告にその失敗があると見られるのであって、訴訟継続中、ひとかどの身代を真面目に作り上げた被告が法廷の片隅で一人孤独に寂しそうにことの成行きを見守って傍聴している姿は憐れでならないとしています。

 

妻の態度にも問題?


また一方原告は、被告が暴力を振るうとか、原告を罵るとか供述し、「一旦脱いでしまった靴は二度と履いて歩く気はしない」と言うと言及。

その言葉は聞こえはいいが、被告の態度も散発的であって、常時被告がそのような乱暴な態度を採っているとは受け取れず、安泰な生活ができるのは被告が仕事に精を出したためであるとして、たまに仕事を手伝わせようと原告を呼びに行くと、テレビを見ながら寝転んで煙草をふかしたり、コーヒーを飲んだりしている、二、三度呼ぶとやっと被告を睨み付けるようにして動き出す、こういうとき屁理屈を言いふくれあがる、旅行などで家を出る時原告はほとんど支度をしてくれない、などという被告の反論には耳を傾けるべきであるともしています。

原告は自由を求めるのならそれなりの自己の生活と行動について独立した責任を覚悟すべきであると指摘。

長男長女が家を出た動機は今ここで問わないが、右二人が独立した現在、子供達は親許を離れてそれぞれ独立の生活を永年に亘ってこれから営んでいくものであるから、原告としてもいつまでも子供の処に身を寄せる安易な態度を改め、速やかに子離れをするべきであり、被告とよく話し合い、これまで約28年間喜びも悲しみも幾歳月被告と共に築いて来た家庭生活を改めて構築していく努力が必要であるとしました。

以上は要するに、ゲマインシャフト的な生き方をゲゼルシャフト的な行動しか知らない被告に要求しようとした原告にも性急な面があると言わざるを得ないとしました。

 

青い鳥を探せとして棄却


現在、原告と被告との婚姻関係はこれを継続することが困難な事情にあるが、なお被告は本件離婚に反対しており、原告に帰ってきてほしい旨懇願しているのであって、原告と被告は子供達がそれぞれ独立した現在老後を迎えるべく転換期に来ていると言えるところ、被告が前記反省すべき点を充分反省すれば、いまなお原告との婚姻生活の継続は可能と考えられるから原告と被告、殊に被告に対しての最後の機会を与え、二人して何処を探しても見つからなかった青い鳥を身近に探すべく、じっくり腰を据えて真剣に気長に話し合うよう、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認め、本訴離婚の請求を棄却する次第であるとしました。

妻からの離婚請求を棄却、離婚を認めないという判断です。

 

夫の家庭内での暴力らしき事情も認定され、別居にも至っているものの、離婚請求が棄却されたという判決です。

現在では、夫婦関係の破綻の事情が、より重視される傾向にあると思いますが、担当裁判官の価値観によって、このような判断がされることもあるのです。

 

離婚理由が微妙な場合には、意識したほうが良い裁判例といえます。

 

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