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FAQ(よくある質問)

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よくある質問

 

Q.別居3,4年で離婚請求は認められる?

これは明確な基準がなく、判断が分かれています。

離婚の可否について、家庭裁判所と高等裁判所で判断が分かれたケースです。

東京高等裁判所平成28年5月25日です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

事案の概要

平成14年に婚姻した夫婦。

同年に長男が出生。

平成23年に別居。別居期間が、家裁時点で3年5ヶ月、高裁時点で4年10ヶ月という事例です。

妻は、夫による暴言や暴力等により全般性不安障害に陥り、別居に至ったとして、婚姻関係の破綻を主張。

し、離婚及び離婚慰謝料を求めるなどした。原審は、Aが婚姻関係破綻の原因として主張する事実は、その存在自体が認められないか、存在するとしても、性格・考え方の違いや感情・言葉の行き違いに端を発するもので、Bのみが責を負うものではなく、Aの言動にも問題があること、Bの同居中の言動には相互理解の姿勢に乏しいものがあったが、Bは真摯に反省し、Aとの修復を強く望んでいること、同居期間(約10年間)に比べて別居期間(約3年5か月間)は短いなどとして、離婚請求等をいずれも棄却した。これに対し、控訴審は、別居期間(4年10か月間余り)が長いというべきであるとした上で、別居後のBの行動等から、婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせる事情があるなどとして、離婚請求を認容した(なお、Aは、原審が離婚慰謝料請求を棄却した部分については不服申立てをしなかったため、当該請求は控訴審の審理対象にはなっていない。)。

 

家庭裁判所の判断

東京家庭裁判所立川支部平成27年1月20日判決は、妻からの離婚請求を否定しました。

妻である原告の請求を棄却するという結論です。

妻は、夫である被告に対し、婚姻関係は、夫の暴言暴力やモラルハラスメントにより妻が全般性不安障害に陥り、別居に至ったことから破綻しており、婚姻を継続し難い重大な事由があると主張。

音は破綻を否認し、離婚を争った事案です。

 

妻の主張は次のようなものでした。

夫は、婚姻当初から、思い通りにならないと、妻や長男を無視し、暴言暴力(物を投げつけるなど)に及んでいた、自らは家事育児を手伝わないのに、掃除洗濯の方法などを事細かく指示し、やり方が気に入らないと大声で怒鳴りつける、話し合いを求めたが無視された等というもの。

妻は、精神的に不安定となり、平成20年には激しいめまいと吐き気で救急搬送。

被告の行為(モラルハラスメント)により、原告は、しばしば動悸、めまい、頭痛や吐き気に襲われ、全般性不安障害と診断され、別居というものです。

 

これに対し、夫は、物を叩いたり、言い合いになったりしたことはあったが、言い過ぎた時などは謝っていたし、暴言や暴力はなく、むしろ妻から激しく怒鳴られたりしたと反論。

従前、全般性不安障害についての理解が不足し、接し方を間違えてきたことを深く反省。今後は、その理解に一層務め、専門家の意見も踏まえながら夫婦共に治療に努力し(夫婦カウンセリングも必要かと思う)、子供のためにも、何年もかかるかもしれないが、もう一度家族3人の生活を取り戻したいと反論。

 

このような主張について、家庭裁判所は、原告と被告間で、掃除・洗濯などをする、しない、そのやり方などにつき言い争いになることが増えた、原告は、被告の要望や意見につき一層過敏に反応するようになり、被害的に捉えては自分のやり方があると被告に激しく抗議したりした。それに対して被告も大声で言い返す、何度か無言で片づけをやり直すなどした(原告は、被告が家事のやり方(片付けの仕方や洗濯物の干し場所など)を細かく指示し、それに添わないと一方的に怒鳴りつけてきたと主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。)と認定するなどしています。


妻の診断についても、同居中、被告に対して「このままだと被告と一緒に生活できなくなる。原告に対する態度を考え直してほしい。」旨を訴えて、深刻に話し合いをしたことはなかった点を指摘。

 

別居後、原告と被告は、被告の実家で被告の両親、原告の母も交えて今後の話し合いをしたが、離婚を主張する原告とやり直したいという被告との間で折り合いがつかなかったと認定。

 

離婚は否定

このような認定を前提に、離婚請求を排斥しました。

 

婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことであるところ、原告は、被告との接触のストレスから全般性不安障害となっていて、被告との同居は無理である旨述べていました。

しかし、原告が婚姻関係の破綻原因と主張する事実は、上記認定のとおり、その存在自体が認められないか、存在するとしても、いずれも、性格・考え方の違いや感情・言葉の行き違いに端を発するもので、被告のみが責を負うというものではないと指摘。

そして、そのような隔たりを克服するためには、相互に相手を尊重し、異なる考え方であっても聞き、心情を汲む努力を重ね、相互理解を深めていくことが必要であるとしています。しかしながら、原告は、独り決めする傾向が見受けられ、被告が後から何か意見などをすると、自分の判断・行動を責められていると感情的・被害的になって受け入れず、被告に自身の精神状況について深刻に相談をすることもしないまま一方的に別居し、別居後も、頑に離婚を主張していると指摘。

他方、被告も、独断的な傾向(とにかくやれば良いのだなど)があり、口論の末ではあったかもしれないが原告に大声を出すなど、原告の精神状態に配慮を欠いた相互理解の姿勢に乏しい言動があったとは認定。

しかし、現在被告は、原告との修復を強く望み、従前の言動を真摯に反省し、全般性不安障害の理解のための努力も重ね、今後も原告の治療を優先に(夫婦カウンセリングも視野に入れている)、段階を踏んだ時間をかけての関係改善を考えていると指摘。また、原告の、全般性不安障害の原因は、原告の生育歴や思考パターンによる部分も大きいものと考えられるとしています。さらに、被告は、長男誕生時からその養育に関わり、現在も被告と長男の関係が良好に保たれているうえ、原告と被告の同居期間が約10年であるのに対して別居期間は約3年5か月と短いとしました。


婚姻関係は、原告の治療を優先に進めながらではあるが、原告と被告が相互理解の努力を真摯に続け、長男も含めた家族のあり方を熟慮することにより、未だ修復の可能性がないとはいえず、婚姻を継続し難い重大な事由があるとまでは認められないとしました。

妻が控訴。

高等裁判所の判断

高等裁判所では、婚姻関係破綻を肯定、離婚を認めました。

高等裁判所は、平成14年の婚姻後、遅くとも平成18年頃からは言い争うことが増えたこと、その後、妻は、夫の帰宅時間が近づくと息苦しくなるようになり、平成23年頃から神経科を受診し始めたこと、そのような中、長男が所在不明となる出来事を契機に、その際の夫の対応に失望した妻が長男を連れて本件別居に至ったことを認定。

本件別居の期間は、現在まで4年10か月間余りと長期にわたっており、本件別居について夫に一方的な責任があることを認めるに足りる的確な証拠はないものの、上記のとおりの別居期間の長さは、それ自体として、婚姻関係の破綻を基礎づける事情といえると指摘。


また、妻は、本件別居後、一貫して夫との離婚を求め続けており、原審における本人尋問においても離婚を求める意思を明らかにしていました。


他方、夫は、原審における本人尋問において、妻との関係修復の努力をするとの趣旨の供述をしたが、本件別居後、夫が、婚姻関係の修復に向けた具体的な行動ないし努力をした形跡はうかがわれず、かえって、別件婚費分担審判により命じられた婚姻費用分担金の支払を十分にしないなど、婚姻関係の修復に向けた意思を有していることに疑念を抱かせるような事情を認めることができると指摘。


以上のとおり、別居期間が長期に及んでおり、その間、夫により修復に向けた具体的な働き掛けがあったことがうかがわれない上、妻の離婚意思は強固であり、夫の修復意思が強いものであるとはいい難いことからすると、婚姻関係は、既に破綻しており回復の見込みがないと認めるべきであって、この認定判断を左右する事情を認めるに足りる的確な証拠はないとして、離婚請求には理由があると結論づけました。


別居期間と婚姻費用

同居しているよりは、別居している方が「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)と認定されやすいことは間違いありません。

しかし、この認定は結構あやふやで、明確な基準があるものではありません。

不貞行為などの明らかな事情がある場合を除いて、暴言とか夫婦喧嘩となると、決定的な事情とは認められにくく、どの程度の期間、別居していれば離婚が可能と言い切れる基準はありません。

本件は、別居期間の長さは、それ自体として、婚姻関係の破綻を基礎づける事情と指摘しています。

その際の期間は、4年10か月でした。

家裁段階では、約3年5か月間を短いと評価されています。この評価が絶対的なものでもありません。

今回は、別居後の婚姻費用分担金支払義務を十分に果たさなかったことも重視されているといえるでしょう。離婚を否定したい夫としては、このようなポイントを押さえておく必要があるかと思います。

 

 

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