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FAQ(よくある質問)

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よくある質問

 

Q.父子関係の直接面会を求めたい場合は?

子との面会が間接交流から直接交流に変更された決定があります。

従前の父子関係を重視した判断です。

大阪高等裁判所令和元年11月8日決定です。参考にしてみてください。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

事案の概要

父(申立人、昭和62年生)と母(相手方、昭和62年生)は、平成22年に婚姻。

同年に長女が、平成25年に二女が生まれました。

夫婦は、その間、父の不貞関係が問題となり、別居と同居を繰り返す生活。

父は誓約書を作成するなどもしています。

しかし、平成25年12月以降、別居生活に。

母と子が同居、父が別居している形です。ただし、別居中も月に1、2回、父は長女を連れて遊園地や映画館等に出かけるなど面会交流がありました。


平成27年2月、母から離婚調停の申し立て。

同年9月、離婚ではなく、当分の間別居すること、母が2人の子を監護養育すること、婚姻費用の分担、父と子が月1回面会交流することを認める旨の調停が成立。

平成28年夏には、父、母、子で旅行もしたり、妻の自宅で宿泊したりしていました。

父は、平成30年に、母の親族の結婚式に参列するなどもしています。

 

しかし、母は、平成30年5月ころから心療内科で投薬治療を受けるようになり、休職。

同時期、父の家で交際女性と対面して、関係が悪化。

面会交流は次第に実施されなくなります。ストレス関連障害により通院治療中であり、心身ストレス増加の誘因となる父との接触を避けることが望ましいと診断されました。


このような経緯で、父から面会交流を求める調停の申立。

母からは、離婚調停の申し立てがされました。

調停は不成立、面会交流を求める調停は審判に移行。

 

家庭裁判所の判断

家裁調査官が子と面接調査。

子は父を慕う気持ちはあるが、とりわけ長女には、父と面会すると母を悲しませることになると案じている様子が窺われたそうです。

家庭裁判所は、当面は、父を子らと直接面会交流させることは相当ではないと判断。

過去の調停で決めた直接交流を、間接交流に変更しました。

父子の面会交流が実施されなくなった原因は、父が婚姻当初から何度も女性問題を起こし、そのため別居調停が成立するなど、婚姻関係が悪化していたことにあると指摘。

関係修復の兆しが見えたが、母は、父宅で交際女性と対面して大きなショックを受け、心身も不調に陥り、これを見た子らが母を気遣う事態となった、主治医から、心身の不調を来たす原因となる父との接触を避けることが望ましいと診断されているなどの事情を理由としました。

 

 

高等裁判所の判断

原審判を変更。

過去の調停条項を変更し、本決定が確定した日の属する月の翌月以降、次の要領により、未成年者と面会交流させよと命じました。

 

面会交流実施要領
1 面会交流の頻度、日時、時間
月1回 毎月第3土曜日の午前10時から午後5時まで
2 未成年者らの受渡場所
中央改札口
3 未成年者らの受渡方法
(1)相手方は、上記1の面会交流開始時に、上記2の場所において、抗告人に対し、未成年者らを引き渡す。
(2)抗告人は、上記1の面会交流終了時に、上記2の場所において、相手方に対し、未成年者らを引き渡す。
4 代替日
未成年者の病気その他のやむを得ない事情により、第3土曜日に面会交流が実施できないときは、翌月の第1土曜日に同様の要領で実施する。翌月の第1土曜日にも実施できないときは、当事者間で協議し、当月の代替日を翌月の面会交流の日までのいずれかの日に定めて同様の要領で実施する。
5 連絡方法
当事者双方は、他方当事者に対し、本決定確定後10日以内に面会交流に関する連絡方法を通知し、同連絡方法を変更した場合には、速やかに新たな連絡方法を通知する。
6 当事者双方は、未成年者らの福祉に配慮し、抗告人と未成年者らの面会交流が円滑に行われるよう協力する。
7 当事者双方は、合意により上記1ないし4の内容を変更することができる。

 

子の忠誠葛藤

未成年者らの従前の父子関係は良好であり、平成30年6月末ころまでは、宿泊はもとより2回にわたり家族で一緒に旅行に出掛けるなど、本件実施要領に捉われずに柔軟かつ円滑に父と未成年者らの直接交流が行われていたのであると指摘。

その際、父が未成年者らに対して不適切な言動に及んだことも窺われないと言及しています。

そして、未成年者らは、現在も父を慕い、直接交流の再開を望んでいると指摘。

このような事情を考慮すると、直接交流を禁止すべき事由は見当たらないとしました。

長女は、父に会いたいと思う一方、母の心中を慮って会うことを躊躇するという忠誠葛藤に陥っており、この状態が続けば、長女に過度の精神的負担を強いることになるとしました。

したがって、抗告人と未成年者らの直接交流を速やかに再開することが未成年者らの福祉に適うと認めるのが相当であると結論づけました。

 

母の体調不良の点は?

母は、心身の不調を理由に間接交流に止めるべきであると主張していました。

この点について、9月には復職できるまでに回復しているのであるから、直接交流に応じることによって健康状態が悪化し、未成年者らの監護に支障を来たしたり、未成年者らに不安を与えたりする状態に至るとは考えられないと指摘。

また、母は、父との接触を避けることが望ましいと診断されているが、未成年者らの年齢(9歳、6歳)や発達状況からすると、当事者のいずれかの目が届く範囲の短距離であれば、受渡場所まで未成年者らだけで歩いて行くことは可能であるから、直接対面することなく未成年者らの受渡しができないわけではないと指摘。

したがって、母の心身の不調は、直接交流を禁止、制限すべき事由にはならないとして、主張を採用しませんでした。

 

面会要領は、概ね、父の主張を認めたものでした。ただ、父は、学校行事への参列も希望していましたが、従前の実績が明らかでなく、未成年者らの意向も確認されていないので、現段階で実施要領に盛り込むのは相当ではないとして、この部分は採用しませんでした。

 

 

家庭裁判所と高等裁判所で判断が分かれました。

面会交流は、子の健全な育成にとって有益なものとされます。

母の体調不良よりも、子の福祉や子の利益を優先して決めた判断と言えます。

その中で、子の意見を忠誠葛藤と位置づけ、これが続くのはかえってよくないと判断したものです。

子は、親に遠慮しますからね。従前の関係が海外旅行などもあったということで、親子関係の継続を重視した判断です。

 

文献では、間接交流は、一見、直接交流よりも子に与える影響は少ないように見えるが、実は違うという指摘もあります。

手紙やプレゼントを受け取るべきか悩んで、かえって忠誠葛藤に陥ることも。

直接交流がダメだから間接交流、と簡単に考えることはできず、事案によって適切な方法を決めないといけないわけですね。

 

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