不貞慰謝料を親に請求した裁判例の解説。神奈川県厚木・横浜市の弁護士

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Q.不貞慰謝料を親に請求できる?

不貞行為の損害賠償請求で、不貞相手の親も被告にされたという珍しいケースがあります。

親も共同不法行為責任を負うと主張しましたが、裁判所は否定しています。

基本的に、親にまで不貞慰謝料の請求が認められることはないでしょう。

東京地方裁判所平成28年5月9日判決を紹介します。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.30

事案の概要

原告は妻。

夫が不貞行為に及んだことから、不貞相手とその父を被告としえ、共同不法行為に基づき慰謝料1000万円を請求した事例。

父については、その不貞関係を公認して援助・助長したことにより精神的苦痛を被ったと主張したものです。

 

原告は、1985年○○月○日生まれの中国籍を有する女性。幼少期以来日本を生活の本拠とし、日本永住者の資格を有しています。

原告と夫は、2007年(平成19年)6月27日にアメリカ合衆国で婚姻。
2011年(平成23年)に長男が出生。


夫は平成23年9月に、原告は同年11月にそれぞれ来日。

夫婦は、当初は東京都台東区所在のシェアハウスに住んでいたが、平成24年5月に東京都足立区綾瀬所在のアパートを借りて転居。


不貞相手は、平成24年12月7日、貸主との間で、東京都西東京市ひばりが丘所在の○号室の賃貸借契約を締結。

父は、連帯保証人になりました。

本件賃貸借契約の入居申込書及び契約書には、本件建物の入居者として、不貞相手のほかに続柄を婚約者として夫が記載されていました。

 

夫は、平成24年12月1日、綾瀬のアパートを出て原告との別居を開始した後、本件建物に入居。

 

裁判所は不貞行為を認定

不貞行為の有無が争点になりました。裁判所はこれを肯定。

その経緯として以下を認定。

不貞相手と夫は、平成24年10月25日に共通の友人を介して知り合い、同月31日以降、頻繁にLINEのメッセージを送り合うように。

夫は、同年11月頃から不動産仲介業者に対し、一人暮らしをするための賃貸物件の紹介を依頼。
夫は、不貞相手に相談して、部屋探しに同行するなどの手伝いをしてもらったが、夫が外国籍であることなどから家主の承諾が得られず部屋探しが難航したことから、不動産業者からの提案で、借主を不貞相手と夫の共同名義とし、不貞相手の父を連帯保証人として契約することを検討。


不貞相手は、同月25日頃、夫を連れて父に引き合わせ事情を説明し、連帯保証人となることの了解を得ました。

 

妻に不貞関係を打ち明ける


その頃、夫は、原告との会話の中で、綾瀬のアパートを出て原告と別居し原告と離婚する意向を明らかにするとともに、寂しいから浮気相手を作ったこと、同女との関係を続けること、同女の父親が賃貸借の保証人になってくれること、同女は賃借人になるから保証人になれないこと、同女と知り合って1か月しか経っていないが毎日会っていることなどを述べ、原告に引越費用の支払を要求。

 

不貞相手が賃貸借契約の名義人に

不貞相手と夫は、共同名義でも部屋を借りることができなかったことから、不動産業者からの提案で、不貞相手のみを借主、夫を同居人として契約することとしました。

予定どおり、父が連帯保証人に。

また、不貞相手は、夫のために本件建物で使用する電化製品の購入などにも協力。


夫の母が、来日した際、不貞相手は、本件建物に赴き、夫の母に会って手料理を振る舞うなどしました。

この頃、原告による子の連れ去り騒動まで起きています。

 

SNSに不貞の写真を投稿


夫は、自身のフェイスブックに、平成25年に不貞相手とともにスキー場に旅行に赴いた際の様子として、スノーボードをしている写真、体を密着している写真、2人分の料理が並べられた写真等を投稿。

不貞相手は、自身のフェイスブックに、平成25年5月2日に夫と2人で函館市に旅行した際の様子として、浴衣を着て密着している写真等を投稿。さらに、同年8月12日には2人で伊豆に旅行した際の海水浴や浴衣姿で花火鑑賞に行った写真を、同年9月15日には西武ドームに野球観戦に行った写真を、同年12月12日には東京ディズニーシーに行った写真を、同月31日には京都に行った写真を、平成26年2月24日には菅平高原スキー場に行った写真をそれぞれ投稿。

 

以上の認定事実によれば、不貞相手は、知り合って間もなく夫と頻繁に連絡を取り合うようになり、夫の転居先を確保するために自己名義のみならず父の保証を得るなど積極的に協力したほか、夫の母が来日した際にも手料理を振る舞ったり、平成25年になって間もなく何度も2人で旅行するようになったことが認められるとしています。

これらの事実を総合すれば、不貞相手と夫は、遅くとも夫が本件建物に転居した平成24年12月頃には既に親密な関係になっていたものと認めるのが相当であり、肉体関係の存在もまた推認できるというべきであるとしています。

 

婚姻関係破綻の主張は否定

原告と夫は、平成24年11月頃には口論が絶えない関係になり、同年12月1日には別居を開始したことが認められることから、不貞行為時に婚姻関係破綻があったか争点となりました。

しかし、これは、夫に浮気をやめて原告とともに子を育てていくよう求める原告に対し、夫が浮気相手と関係を続け原告と離婚するなどとして一方的に別居を開始したことによるもので、その後も原告は夫との関係修復を希望しているというのであるから、一方的に別居を開始したからといって直ちに婚姻関係が破綻したと認めるのは相当でないとしています。

その破綻時期は、原告が夫に対して不貞等を理由とする損害賠償請求訴訟を提起した平成25年11月頃と認めるのが相当としました。


したがって、不貞関係は、婚姻関係の破綻前に開始されたと認めるのが相当としています。

 

過失による不貞行為を認定

不貞関係の際に、夫は嘘をついていました。

原告と夫婦で綾瀬のアパートに居住していることを隠し、前妻である原告と離婚してシェアハウスに住んでいると。

そして、ルームメイトに不満があることから転居先を探しているなどと説明していました。

不貞相手は、平成25年11月24日、原告と妻の婚姻関係が継続していることを知り、嘘つきと非難して喧嘩になり夫が謝罪したことが認められるから、不知相手は、原告と離婚した旨の夫の説明を信じていたと認めるのが相当としています。

もっとも、本件賃貸借契約の締結に当たって、夫の住民票、パスポート、外国人登録証明書等の書類を見れば、夫の在留資格が永住者の配偶者等になっていることが確認できたこと、夫の母が来日した際の子を巡る紛争を目の当たりにしたことなどからすれば、離婚していないことを窺わせる事情が複数存したというべきであり、不貞相手自身も夫が離婚していないと疑ったこともあったというのであるから、不貞相手は、夫や夫の母に問い質すなどして離婚していないことを知ることもできたと認めるのが相当であり、それにもかかわらず安易に夫の発言を信じて夫との関係を継続したことにつき、過失が認められるとしています。

これにより不法行為を認定。

 

不貞行為で父親の責任は否定

父は、不貞相手から夫の転居先の賃貸借契約を共同名義で締結するに当たって連帯保証をすることを依頼され、夫と直接会って事情の説明を受けた上で、不貞相手が責任を取る前提で連帯保証人となることを承諾したこと、その契約手続は不貞相手に任せ、保証意思の確認の電話を受けた際にはこれを了解している旨を回答したことが認められます。

父は、夫の転居先の確保に協力した事実が認められるほか、平成25年8月頃以降に不貞相手と夫の交際を知り、ともに野球観戦をするなどしたことが認められるとしています。

しかし、平成25年11月24日以前に不貞相手が原告と夫の婚姻関係の存在を知っていたと認めるに足りる証拠はなく、本件賃貸借契約の締結直後から本件建物で同棲したとの事実も認められないことからすれば、父の行動をもって、父が原告と夫の婚姻関係を知った上で不貞行為を援助・助長したとは認められず、交際を開始したことを知った後においても、父が夫の婚姻関係の有無を確認すべき注意義務があったとは認め難いとしています。

これらを理由に、父親の責任は否定しています。

 

不貞慰謝料の金額は100万円

原告が不法行為によって相応の精神的苦痛を被ったことが明らかとし、慰謝料を認定しています。

不貞相手は、婚姻関係が終了していることに疑いを持つべき契機があったにもかかわらず、原告とは離婚した旨の夫の発言を漫然と信用した点で落ち度があるといえるものの、その主要な責任は虚偽の説明をした夫にあるといえ、不貞相手の過失の程度は重大なものとまではいい難いといわざるを得ないとしました。

そこで、これらの諸事情、その他の本件に顕れた一切の事情に照らせば、原告が不貞行為により被った精神的苦痛を慰謝するのに相当な慰謝料額は100万円と認めるのが相当であるとしています。

 

 

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