財産分与審判への即時抗告は両者ともできるとの最高裁判断。神奈川県厚木・横浜市の弁護士

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よくある質問

 

Q.財産分与審判への即時抗告は?

財産分与の却下審判に対しては、メリットがない側も即時抗告ができるという判断がされました。

最高裁判所第1小法廷令和3年10月28日決定です。

 

この判例をチェックすると良い人は、次のような人。

  • ・財産分与の審判申立を検討している
  • ・財産分与審判への即時抗告を検討している

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.8.7

事案の概要

本件は、離婚をした妻と夫が、それぞれ、財産分与の審判を申し立てたという事案です。

2つの事件番号がついています。

妻からの申立が「第1事件」、夫からの申立てが「第2事件」です。

 

夫婦は、平成23年に婚姻、平成29年8月9日に離婚。

妻は、令和元年8月7日、財産分与の調停の申立てをしました。
この調停事件は、令和元年11月、不成立により終了、審判に移行。調停申立て時に、第1事件の審判申立てがあったものとみなされました(家事事件手続法272条4項)。

夫は、令和2年3月、第2事件の申立てをしました。

 

高等裁判所までの判断

家庭裁判所は、第1事件及び第2事件の各申立てをいずれも却下。
夫は、即時抗告。

高等裁判所(広島高決令2.10.29)は、即時抗告のうち第1事件に係る部分を却下しました。第2事件に係る部分については、民法768条2項ただし書所定の期間の経過を理由に申立てを却下すべきとして抗告を棄却。離婚から2年が経過しているという理由です。

第1事件の申立てを却下するのは、第1事件において夫が受けられる最も有利な内容であり、夫は抗告の利益を有するとはいえないから、即時抗告をすることができない、即時抗告のうち上記部分は不適法との判断です。

 

最高裁判所の判断

財産の分与に関する処分の審判の申立てを却下する審判に対し、夫又は妻であった相手方は、即時抗告できるとの判断でした。

主文としては、

原決定中、主文第1項を破棄。
本件を高等裁判所に差し戻すというものです。

家事事件手続法156条5号は、財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対しては、夫又は妻であった者が即時抗告をすることができるとしています。

これは、財産分与の審判及びその申立てを却下する審判に対しては、当該審判の内容等の具体的な事情のいかんにかかわらず、夫又は妻であった者はいずれも当然に抗告の利益を有するものとして、これらの者に即時抗告権を付与したものであると解されると指摘。


したがって、財産分与の審判の申立てを却下する審判に対し、夫又は妻であった者である当該申立ての相手方は、即時抗告をすることができるものと解するのが相当であるとの結論です。

なお、民法768条2項ただし書所定の期間の経過を理由に第2事件の申立てを却下すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができるともしています。期限が過ぎてしまっている点はやむを得ないといえるでしょう。

 

財産分与審判に即時抗告できる人

判決でも指摘されている156条5号で、即時抗告できるとされているのは、「夫又は妻であった者」です。

これを読めば、夫も妻も即時抗告ができると考えられます。即時抗告をすることの利益があるかどうかは問われていないように読めます。

ただ、民事訴訟で判決に不服申立をするには、具体的な上訴の利益が必要と言われます。

家事審判でも、同じように、即時抗告をするメリット・利益がないとだめなのではないかというのが、本件の問題点です。

 

非訟事件では利益が必要

非訟事件の即時抗告についても、終局決定により「権利又は法律上保護される利益を害された者」ができるとされています(非訟事件手続法66条1項)。

不服申立ての利益が必要とされているのです。

ただ、家事審判事件については、「非訟事件」になるものの、非訟事件手続法の適用はないとされています。条文上は、この規定が適用されないことになります。

家事審判というものは、個別にきめ細かく複数の要素を検討しなければならない性質のものです。

そのため、別に、即時抗告をすることができる内容を規定しているものと言われます。

そして、家事審判に対する即時抗告の規定をチェックすると、却下審判に対して申立人だけが即時抗告できる場合には、しっかりと、その旨が規定されています。

だとすれば、誰が即時抗告できるのか、家事審判ではしっかり規定されているものと認められます。

 

財産分与審判では不利益判断も

本決定は、財産分与を却下する審判について、限定なく、双方が即時抗告できるとしているように読めます。

この前提として、財産分与の審判の申立てがあったとしても、裁判所は、逆に、申立人から相手方に対し、財産分与を命ずることもできるという考えがあります。申立人にとって不利益な判断がされることもあるということです。

このような前提で、財産分与では、審判の申立ての取下げ制限に関しても規定されています。

財産分与審判の申立においては、この点をしっかり理解しておく必要があるでしょう。

●参考記事

Q.家事審判への不服申し立て、即時抗告の手続きは?


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