
FAQ(よくある質問)
よくある質問
Q.離婚後の姓と戸籍は?
離婚時の姓と戸籍の手続きは意外と複雑で、特に子どもがいる場合は注意が必要です。
離婚により姓は原則として旧姓に戻りますが、婚氏続称届を提出すれば結婚時の姓を継続できます。ただし、子どもの姓と戸籍は自動的には変わらないため、家庭裁判所での許可申立てと役場での入籍届が必要です。
離婚後の新生活をスムーズに始めるために、必要な手続きの流れとポイントを詳しく解説します。
この記事をチェックすると良い人は、次のような人。
- ・離婚手続中の妻
- ・子どもがいる離婚当事者
離婚後の姓と戸籍はどうなる?
まず、離婚後の姓名の基本ルールですが、婚姻時に相手の姓に改姓した側(多くの場合は妻)は、離婚すると原則として婚姻前の旧姓に戻ります。
一方、結婚時に姓を変えなかった側(多くの場合は夫)は離婚後も姓は変わりません。
この姓の変更(復氏)は法律上自動的に行われ、離婚の成立と同時に戸籍上の氏が旧姓に復元されます。
家庭裁判所での離婚と戸籍の届出
裁判離婚(調停や判決による離婚)の場合の離婚手続きにも注意が必要です。
裁判所で離婚が認められた場合でも、それを市区町村役場に届け出て戸籍に反映させる必要があります。
勝手に戸籍に反映されるものではありません。
調停離婚や裁判離婚では、調停成立日や判決確定日から10日以内に離婚の届出を役場に提出しなければなりません。
この届出の際には、調停調書の謄本や確定判決の謄本+確定証明書など裁判所の書類を添付し、届出人(通常は申立人側)だけが署名押印します(相手方や証人の署名押印は不要です)。
また、この離婚届の提出によって離婚が戸籍に記載され、妻は一旦旧姓の戸籍に戻るか新しい戸籍を編製することになります。
婚氏続称の手続き(離婚後も婚姻姓を名乗りたい)
離婚後に旧姓に戻らず、引き続き結婚中の姓を使用したい場合、日本の戸籍制度では「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する必要があります。
これを一般に「婚氏続称届」と呼び、民法767条2項および戸籍法77条の2に基づく手続きです。
この婚氏続称届は、離婚の日から3ヶ月以内に届け出る必要があります。
協議離婚の場合は離婚届を提出した日、調停離婚の場合は調停成立の日、裁判離婚の場合は判決確定の日が「離婚の日」となります。
この3ヶ月の期限を過ぎると、婚氏続称は原則できなくなり、一旦旧姓に戻った後で再度姓を変更するために家庭裁判所への姓の変更申立て(別途の改姓手続き)が必要になるので注意しましょう。
できるだけ離婚の届出と同時、または離婚後できるだけ早く行うことをお勧めします(離婚届と同時に提出すれば、旧姓への変更→改姓という二度手間の手続きを避けられます)。
市区町村役場の戸籍担当窓口で手続きを行います。提出できる役場は、届出人(姓を続称する人)の本籍地か住所地(所在地)のいずれかです。
婚氏続称をする本人が届出人です。
通常は離婚によって旧姓に戻ることになる妻が該当します。届書には届出人本人の署名が必要です。
代理人が提出することも書類上は可能ですが、書類に不備があった場合その場で修正できるよう、可能な限り本人が窓口に出向くことが望ましいでしょう。
提出には「離婚の際に称していた氏を称する届」という所定の届出書が必要です。この用紙は全国共通様式で、市区町村役場の窓口で入手できます(自治体によってはホームページからダウンロード提供している場合もあります)。
2024年3月の戸籍法改正により、戸籍の届出の際に戸籍謄本の添付は原則不要となりました。
そのため、本籍地に提出する場合や戸籍がコンピュータ化されている場合、別途戸籍謄本を用意する必要はありません
(本籍地以外への届出で、かつ戸籍が電子化されていない特殊な場合のみ戸籍謄本が求められる可能性があります)。
届出書への記入は黒インクのボールペンで行い、鉛筆や消せるペンは使用不可です。
用紙には現在の氏名や生年月日、離婚日、新しく編製する戸籍の本籍地(=新本籍)などを記入します。新本籍とは離婚後に自分が筆頭者となる戸籍の所在地です。離婚によって夫の戸籍から妻が除かれるため、婚氏続称する場合も妻は新たに自分を筆頭者とする戸籍を作る必要があります(旧姓に戻る場合は旧姓の戸籍を作成するか実家の戸籍に入る場合もありますが、婚氏続称する場合は旧姓とは異なる姓になるため必ず新戸籍を編製します)。
離婚届と同時に提出する場合には、離婚届側で記載する内容も重複しています。
なお、新本籍は国内の市区町村の地番まで指定できます。
例えば現在の住所を新本籍にする場合、マンション名・部屋番号等は戸籍には含めず「○丁目○番○号」までを書きます。事前に新本籍として希望する地番を確認しておくとよいでしょう。
本籍地は変更せず、同じままでも問題ありません。
窓口での手続きの流れ
届出書に記入・署名し、役場の戸籍窓口に提出します。
本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)の提示を求められる場合がありますので持参してください。離婚届と同時に提出する場合は、離婚届と婚氏続称届の両方を窓口に出し、戸籍係が内容を確認します。
不備がなければ受理され、その場で新しい戸籍が編製に入ります。
新本籍地がその役場にある場合、離婚届と同時なら離婚後すぐに婚姻時の姓のままの戸籍が作られる形です。
後日提出する場合も、受理されれば戸籍が婚姻時の姓で編製され、旧姓に戻っていた戸籍から改製されます。
届出自体に手数料は不要ですが、受理後に新戸籍謄本を取得したい場合は1通数百円程度の手数料で請求できます。
婚氏続称届に、夫の同意は不要です。婚氏続称は妻本人の権利であり、元夫の許可や署名は一切必要ありません(相手が反対しても法的に阻止はできません)。安心して手続きしましょう。
夫側からは、姓を名乗ってほしくないという声もありますが、法的に強制できるものではありません。
子どもの姓と戸籍はどうなる?(離婚後の親権と子の氏)
次に、子どもの姓(苗字)や戸籍についてです。
離婚によって夫婦の戸籍関係は変わりますが、未成年の子どもの戸籍や姓は離婚しただけでは自動的には変わりません
。親権者をどちらに指定したかに関わらず、子どもの姓は婚姻中の姓のままであり、戸籍も離婚前と同じ戸籍に留まります。
一般的なケースでは、婚姻中一家で夫の姓を名乗っていた場合、離婚後も子どもは引き続き夫(父)の姓を名乗り、父の戸籍に残る形になります。
母が旧姓に戻った場合、母と子で姓が異なる状態になりますが、それだけで子の姓が変わることはありません。
つまり、母が親権を得ても、何もしなければ子どもの名字・戸籍に変動は生じないという点をまず押さえておきましょう。
もっとも、離婚後の生活では「子どもと母の姓が違うのは不便」「できれば母と同じ姓・同じ戸籍にしたい」と希望するケースが多いです。
例えば学校の手続きや日常生活で母子で姓が異なると説明が必要になったり、精神的にも家族として一体感を持たせたい、といった理由があります。
また、母が婚氏続称を選ばず旧姓に戻した場合は子と母の姓が明確に違ってしまいます。このように離婚後に子どもの姓を変更したい(母の姓に揃えたい)場合や、子どもを母の新しい戸籍に入れたい場合には、別途所定の手続きを踏む必要があります。
その手続きとは、(1) 家庭裁判所での「子の氏の変更許可」の申立てと、(2) 市区町村役場での「入籍届」(戸籍届出)の2段階です。
家庭裁判所で子の氏の変更許可を申立て
まず行うべきは、家庭裁判所に対し「子の氏の変更許可」の審判を申し立てることです。
民法791条に基づき、子どもが父または母と異なる姓を名乗っている場合、家庭裁判所の許可を得て届出をすることで、その父または母と同じ姓を名乗ることが可能になります(離婚後に母と子の姓が異なるケースが該当します)。この許可申立ての具体的手順は次のとおりです。
申立人は子ども本人ですが、子が15歳未満の場合は法定代理人である親権者(通常は母)が子に代わって申立てを行います。
子どもが15歳以上(中高生以上)の場合は子ども自身が申立人となり、自ら手続きをする必要があります。
15歳以上のお子さんの場合でも、手続き自体は親がサポートして書類を用意してあげても構いませんが、申立書には本人の署名が必要です。
申立先(管轄の裁判所)は、子の住所地を管轄する家庭裁判所です。遠方の場合は郵送提出が可能な場合もありますが、不明な場合は事前に家庭裁判所に問い合わせましょう。
申立書の書式や記載例は裁判所の窓口で入手できるほか、裁判所ウェブサイトにも情報があります。
申立書(家庭裁判所所定の書式)1通に、子どもの氏を〇〇に変更したい旨やその理由(例:「離婚により母と子の姓が異なるため、監護養育上支障がないよう母と同じ姓に変更したい」等)を記載します。
子どもの戸籍謄本および母(申立人)の戸籍謄本を各1通ずつ準備します。
離婚の事実が記載されているものが必要なので、離婚後に取得した最新の戸籍謄本を用意してください。
母が婚氏続称して新戸籍を作っている場合はその戸籍謄本、旧姓に戻している場合は旧姓の戸籍謄本となります。
上記書類を家庭裁判所に提出すると、家庭裁判所で審理が行われます。子の氏の変更許可の申立ては、離婚に伴うものであれば特に争いがない限り、問題なく許可されるケースがほとんどです。
家庭裁判所から特段呼び出しがない限り、申立人や子どもが出廷する必要も基本的にありません。
申立てから許可審判が下りるまでの期間は家庭裁判所の混雑状況によりますが、早ければ即日〜1週間程度で許可が出ることもあります。
家庭裁判所から交付される「子の氏の変更許可審判書の謄本」は、この後の戸籍届出手続きで必要になる重要書類です。大切に保管しつつ、入手したら次の役場での届出に移りましょう。
役場で入籍届を提出し、子の戸籍と姓を変更
家庭裁判所で子の氏の変更の許可が出たら、いよいよ子どもを母親の戸籍に入籍させる手続き(戸籍の届出)を行います。
これは一般に「入籍届」と呼ばれる戸籍法上の届出で、許可審判書を添付して市区町村役場に提出することで子どもの戸籍の所属と氏を変更するものです。
届出人: 入籍届の届出人は入籍する子本人です。ただし子が15歳未満の場合は法定代理人である親権者(母)が届出人となって署名します。子が15歳以上の場合は子自身が署名し届け出る必要があります。
実際の提出は母が行っても構いませんが、届書の署名欄は子ども本人が自筆で記入する点に注意してください。
届出先: 入籍届は(1) 入籍する子の本籍地または(2) 届出人(母)の住所地の役場で受け付けてもらえます。
一般的には、新しく子を入れる先である母の新本籍地か、子どもの現在の本籍地のどちらか近いほうで提出するとよいでしょう。
例えば子どもの本籍が離婚前の父の戸籍で〇〇市にある場合、〇〇市役所に提出できますし、母の現住所が△△市であれば△△市役所にも提出可能です。
提出先によって事前準備書類が変わる場合があるため、不明な場合は役場に問い合わせましょう。
必要書類: 入籍届書1通(子一人につき1枚用意します)と、家庭裁判所の許可審判書の謄本を添付します。
入籍届の用紙も戸籍届出用の全国共通様式で、役場窓口で入手できるほか自治体HP等でダウンロード可能な場合があります。戸籍謄本については、先の家庭裁判所申立ての際に用意した子や母の戸籍謄本が使い回せそうですが、提出先が本籍地でない場合や戸籍データ未連動の自治体間の場合には改めて最新の戸籍謄本(子の現在の戸籍および母の戸籍)を添付するよう求められることがあります。
ただし2024年改正で戸籍届への戸籍添付不要が原則化されたため、多くの自治体では許可審判書の添付だけで足りるケースが増えています。
事前に提出先の役場に確認すると確実でしょう。
担当者が内容と添付書類を確認し、問題がなければ受理されます。
入籍届が受理された時点で効力が生じ、子どもの戸籍の所属(本籍)が母の戸籍に変わり、子の氏(名字)も母の姓に変更されます。具体的には、子どもは父の戸籍から除かれて母の戸籍に入籍し、戸籍上の氏が母の氏に改まりました(既に姓が同じ場合も戸籍上の所属のみが変更されます)。戸籍の記載(電算処理)の完了には多少時間がかかる場合がありますが、通常受理日から1週間前後で新しい戸籍が編製されます。
処理完了後は、母の戸籍謄本に子どもが載る形となります。こちらも届出自体には手数料は不要です。
新しい戸籍謄本が必要な場合は、受理日を含め10日程度で出来上がるため(自治体による)、日数を見計らって請求しましょう。
その戸籍謄本を使い、子どもの健康保険や学校関係書類、パスポートなど各種記録の氏名を新しい姓へ変更する手続きを進めます。
母が婚氏続称している場合でも、この子の氏変更と入籍届の手続きは必要ですので注意してください。
たとえ母と子の姓が離婚後も同じだったとしても、離婚により母と子は戸籍が別々になっています。
子を母の戸籍に移すには法的には「子が母の氏を称する」手続きを踏む必要があり、家庭裁判所の許可無しに入籍させることはできません。
つまり、姓が変わらないケースでも子を母の戸籍に入れるには許可審判+入籍届が必要という点を覚えておきましょう。逆に「子どもは父の戸籍のままで構わない」「姓もそのままで良い」という場合、これらの手続きを無理に行う必要はありません。
その場合、子は引き続き父の姓・戸籍に残ります。
ただし母と子で姓が異なる状態になりますので、日常生活では学校への届け出などで母子関係を証明する書類(戸籍謄本や離婚届受理証明書)を適宜用意するなどの工夫が必要になる点は留意してください。
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