監護権、監護者指定審判の解説。神奈川県厚木・横浜市の弁護士

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よくある質問

 

Q.監護権とは?

監護権は、親権に含まれる「身上監護権」として、子どもと同居して日常の世話や教育を担う権利・義務です。親権はこれに加え、財産管理や法律行為の代理なども含む包括的な権限。

別居・離婚の局面で「どちらが子を監護するか」でもめたときは、家庭裁判所の監護者指定(調停・審判)で子の福祉を最優先に判断されます。

この記事をチェックすると良い人は、次のような人。

  • ・子どもの監護をめぐって争いがある夫婦
  • ・監護者指定の申立て手続きを知りたい人

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2025.12.16

監護権とは何か?親権との違い

「監護権」とは、親権の中に含まれる身上監護権(しんじょうかんごけん)のことで、子どもと一緒に生活し日常の世話や教育を行う権利・義務を指します。

一方、「親権」はそれ自体が法律上の包括的な権利義務であり、子どもの身上監護(監護養育)に関する権利と、子どもの財産を管理・処分する権利(財産管理権)などを含む広い概念です。

つまり親権には子どもの世話だけでなく財産管理や法律行為の代理権も含まれますが、監護権はその中で子どもの世話や教育に関わる部分を指すものです。

2025年時点では、通常、未成年の子がいる夫婦が離婚する際はどちらか一方を親権者と定めます(日本は離婚時に父母のどちらかのみを親権者とする単独親権制度)。

親権者となった側が子を引き取り育てるのが一般的ですが、特別な手続を経れば、親権者と別に子の監護者(監護権者)を定めることも可能です。

例えば「親権者は父、監護者は母」といった形で役割を分けることも法律上認められています。

ただし、このように親権者と監護者を分けるケースは例外的で、家庭裁判所も慎重な姿勢です。

親権者と監護者が異なる場合、監護者は日常の子育てを担いますが、重要な法律行為(例えば進学に伴う契約や財産管理など)の際には親権者の同意が必要になるなどの制約も生じます。基本的なイメージとして、親権は法律上の権限全般、監護権は子どもの身の回りの世話と押さえておくとよいでしょう。

親権と監護権

監護者指定審判とは?申立てが必要となるケース

監護者指定審判とは、家庭裁判所が子どもの監護者(監護権を行使する者)を決定する手続き(審判)です。

夫婦の話し合い(協議)では決まらない場合に、家庭裁判所に申し立てて「どちらが子どもを監護するか」を裁判所に判断してもらいます。典型的なケースとしては、以下のような状況で申立てが検討されます。

離婚前の別居中 

離婚前に夫婦が別居し子どもの奪い合いになっている場合。

たとえば母親が子を連れて別居したが、父親も子どもを取り戻したい場合、どちらが監護すべきかを明確にする必要があります。

このような場合、親権はまだ両親が共同で持っていますが、離婚前の段階でも監護者指定によって一方を正式に子の監護者として定めることができます。

子どもを一方的に連れて行かれた側は、力づくで取り返そうとするとトラブルになる恐れがあるため、速やかに法的手段をとることが重要です。

家庭裁判所に監護者指定の申立てを行い、必要に応じて子の引渡しの仮処分(審判を待たずに子どもの身柄の引渡しを命じる暫定的な措置)も併せて申し立てることで、適切な法的解決を図ります。

離婚時に親権者と監護者を分けたい場合

離婚協議や調停で、親権そのものは一方に譲るものの、現実の子育ては他方が担う方が子の利益になると考えられる場合です。

例えば、「幼い子どもなので普段の養育は母親に任せたいが、母親の金銭管理能力に不安があるので親権者は父親に」といったケースが考えられます。

このような場合には離婚届に記載する親権者は父親としつつ、家庭裁判所に申し立てて母親を監護権者(子の監護者)に指定してもらう必要があります。もっとも前述の通り、裁判所は親権者と監護者が分かれることに消極的であり、両親合意の上で特段の理由がある場合に限られるのが実情です。

したがって、こうした申立てが必要となるのは、どうしても監護権者を親権者と別に定めざるを得ない事情がある場合と言えるでしょう。

離婚後に状況が変化した場合 

離婚時には一方が親権者兼監護者となったものの、その後の事情変更で監護者を変更する必要が生じるケースです。例えば離婚後に親権者の健康状態が悪化して子を養育できなくなったり、子どもが親権者ではない方と暮らしたいと強く希望するようになった場合です。

ただし、離婚後に親権者と異なる者を監護者に指定するハードルは高く、基本的には親権者変更の申立て(親権者自体を変更する)や子どもの引渡し等と併せて慎重に検討されます。

以上のように、「子の福祉」(子どもの幸せ・利益)のために誰が子を養育するのが適切かを巡って争い・疑問がある場合に、家庭裁判所の調停・審判が利用されます。当事者間で話し合いがつかないときや話し合い自体が困難なときには、家庭裁判所に監護者指定を申し立てることが必要になるのです。

監護者指定の理由

 

申立てに必要な書類と費用

家庭裁判所に監護者指定(監護権指定)の申立てを行う際には、以下の書類等を準備します。

主な必要書類は家庭裁判所で用意されている申立書とそのコピー類、および子どもに関する戸籍資料です。

 

申立書(書式): 家庭裁判所所定の「子の監護者の指定申立書」を正本1通提出します(裁判所用)。

加えて、その写しを相手方用に1通添付し、さらに申立人の控えとしてもう1通作成するので、計3通が必要です。

多くの家庭裁判所では3枚複写の用紙が窓口に用意されています。申立書には申立人・相手方や子どもの氏名、生年月日、申立ての趣旨・理由(どうして自分が監護者にふさわしいか等)を記載します。

子の戸籍謄本(全部事項証明書): 子どもの現在の戸籍の謄本を用意します。子が複数いる場合は各子どもについてそれぞれ1通ずつ必要です。戸籍謄本は発行後3か月以内の新しいものを用意してください。

通常はコピー提出で構いませんが、場合によっては裁判官から原本の提出を求められることもあります。

戸籍謄本を用いることで親子関係や身分関係を証明します。なお、当事者または子どもが外国籍で戸籍がない場合は、代わりに住民票(世帯全員の記載があるもの)を提出します。

進行に関する照会回答書: 家庭裁判所が事件を進行するにあたり事前に確認したい事項に回答する書式です。例えば相手方と連絡が取れるか、他に進行中の関連事件があるか等について記載します。所定の様式(裁判所ウェブサイト等でダウンロード可)に記入して1通提出します。

送達場所等届出書: 裁判所からの書類送達先(受取人住所)を届け出る書類です。申立人・相手方それぞれについて記載し1通提出します(相手方住所を秘匿したい場合は別途非開示申出の手続もあります)。

上記は標準的な必要書類ですが、事案によって追加資料の提出を求められることがあります。例えば子どもの現在の生活状況や親の収入・資産状況などを把握するため、次のような資料が証拠書類として提出されることが一般的です。

当事者の陳述書: 自身がどのように子どもを養育してきたか、相手との経緯、子どもの状況などを詳細に書面にまとめたもの。事実経過や監護方針を整理し、写真なども添付します。

収入に関する資料: 申立人(あなた)の収入証明書類(給与明細、源泉徴収票、課税証明書等)や勤務先の在職証明など。安定した収入があることは、子どもを養育する能力の裏付けになります。

住居・生活環境に関する資料: 現在の住居の間取り図や写真、子どもの部屋や生活環境がわかる資料。学区や周辺環境の説明、同居予定の祖父母などサポート体制がわかる資料も有用です。

育児の実績を示す資料: 例えば母子健康手帳(乳幼児の場合)、保育園の連絡帳や学校の成績表、習い事の出席記録など。日頃どちらが主に子どもの世話をしてきたかや、子どもの発育状況を示す客観資料になります。

これらの書類を揃え、家庭裁判所に提出することで手続きが進みます。

監護者指定審判必要書類

また、申立てには所定の費用(手数料)が必要です。子ども1人について収入印紙1,200円を申立書に貼付します。監護者指定の審判は、子ごとに別事件扱いとされます。また、子の引渡についても別事件扱いとなります。

さらに連絡用の郵便切手(郵便代)も納付します。切手の金額・内訳は申立先の家庭裁判所ごとに異なるため、各裁判所の案内に従って準備してください(裁判所ウェブサイトや窓口で案内があります)。これら費用を納めれば手続開始となります。

 

審判手続を弁護士に依頼する場合には、別に弁護士費用が必要です。費用は事務所によって違います。

手続きの流れ(申立てから審判まで)

監護者指定を申し立てた後の手続きは、大きく家庭裁判所の調停と審判とで異なります。

家事事件ではまず調停手続(話し合い)が優先され、調停で合意に至らなかった場合に審判(裁判官が判断を下す手続き)へ進むのが一般的です。

以下、その基本的な流れを説明します。

家庭裁判所への申

申立書類一式を子どもの住所地または相手方(もう一人の親)の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

相手方と合意して管轄外の家庭裁判所に申し立てることも可能ですが、その場合は管轄合意書を添付する必要があります(夫婦双方が書面で合意)。

申立てが受理されると事件番号が付与され、手続きが正式に開始します。

調停手続き

まずは家事調停(家庭裁判所調停)によって解決を図ります。調停委員(男女一名ずつの調停委員)と裁判官が関与し、当事者双方から事情を聴き取りながら話し合いが進められます(当事者は調停委員を介して別々に話す形式です)。

監護者指定の調停では、申立人(あなた)が「自分を監護者に指定してほしい理由」や現在までの養育状況、相手方の養育方針などが詳しく尋ねられます。

また子の福祉(子どもの幸せ・健全な成長)の観点から、以下のような点も調停委員等によって検討されます。

各親の経済力や家庭環境(収入状況、住環境、周囲のサポート体制など)

子どもの現在までの養育環境と安定性(どちらが主に世話をしてきたか、現状の生活の連続性)

子どもの年齢・性別・性格、健康状態や発達状況

子どもの就学状況や友人関係(環境を変えることによる影響の有無)

子どもの意思・意向(※一定年齢以上であれば調査官等を通じて意思を確認し尊重)

各親の養育意思と愛情の度合い(子への愛着や今後も育てたいという熱意)

各親の養育能力(心身の健康状態、過去の養育実績、将来にわたる安定性)

居住環境の適否(住居や周辺環境が子育てに適しているか、安全か)

両親のどちらが面会交流(もう一方の親との交流)に協力的か(他方の親との関係維持を阻害しない姿勢も評価されます)。

調停では家庭裁判所調査官による事実調査が行われることもあります。必要に応じて調査官が各家庭を訪問したり、子ども本人や学校・保育園の関係者から話を聞いたりして、養育環境や各親の状況を調べ、報告書を作成します。

その調査結果も踏まえつつ、調停委員は双方の主張や提出資料をよく把握し、子どもの健全な成長にとって最も良い解決を目指して話し合いを仲介します。

双方が合意に達すれば調停成立となり、合意内容(どちらを監護者とするか等)が調停調書に記載されて確定します。

審判手続き

調停で話合いがまとまらず不成立となった場合、または調停を経ずに直接審判を求めた場合には、審判に移行します。

調停不成立の場合は自動的に審判開始となり、申立人が改めて申立て直す必要はありません。

審判では担当の家庭裁判所裁判官が、調停で明らかになった事情や提出された全ての資料、一切の事情を考慮して判断を下します。

審判では非公開の法廷で審問が行われることもあり(裁判官が当事者から直接話を聞く手続き)、調停段階で得られた情報に加えてさらに詳細な証拠調べや主張立証の場となります。

調停を経ていない場合には、審判手続の中で調査官による事実調査が行われることが多いでしょう。

裁判官は調査官の報告や当事者の証拠を総合評価し、子どもの利益を最優先にどちらを監護者と指定するか判断します。

審判の結果は「○○(申立人 or 相手方)を子の監護者に指定する」といった形で書面の決定書として示されます。

通常、申し立てから審判の決定まで半年程度かかることが多いですが、事案によってはさらに長引くケースもあります。審判が下れば、基本的にはその内容に従って子の監護者が決まります。

 

審判の確定 

審判の結果に当事者双方が納得していれば、その審判は確定します。

確定とは、もう後戻りできない最終的な効力が生じることです。確定した審判は法律上の強制力を持ち、例えば監護者に指定された側が子どもを引き取れていない場合は強制執行(子の引渡し命令の強制実施)も可能になります。

一方、結果に不服がある場合は次項のとおり上級裁判所に不服申立て(抗告)が可能です。

なお、審判実施中に一方が保全処分(ほぜんしょぶん)と呼ばれる暫定的な措置を申し立てていた場合、審判が出るまでの間に仮の結論が出されることもあります。

保全処分が認められれば審判前でも一時的に子どもの引渡しが命じられ、相手が抗告してもその効力は止まりません。緊急性が高い事案では、審判を待たずに子の安全を確保するためこの制度が利用されます。

 

監護権者として選ばれるためのポイント

家庭裁判所が監護者(監護権者)を指定する際には、何よりも子どもの利益(幸せ・福祉)を最優先して判断します。

そのため、「親としての愛情が強い」「経済力が高い」など親側の事情だけで決まるわけではなく、子どもの側の事情も含めた総合評価になります。

以下に、監護権者として裁判所に選ばれる(ふさわしいと判断される)ために重要とされるポイントを整理します。これは裏を返せば、申立人が自らの主張を補強する際に意識すべきポイントとも言えます。

子どもの安定した生活環境(継続性)

これまで子どもが安定して暮らしてきた環境をできるだけ維持することが望ましいという考え方です。

裁判所は「環境の継続性(現状維持)の原則」を重視する傾向があり、従前から子どもを主に養育してきた親や、現在子どもが落ち着いて生活している環境を変えないことを優先する場合があります。子どもが地域での友人関係や学校生活に馴染んでいる場合、それを乱さずに済む方を監護者と指定することが多いです。

したがって、別居後すぐに申し立てるなどして「自分と暮らす現状」を作り安定させておくことも有利に働きます。時間が経つと相手側での生活が定着してしまい不利になる可能性があるため注意が必要です。

子どもの意思の尊重 

子ども本人がどちらと暮らしたいかという希望も重要な要素です。

特に子どもが15歳以上であれば、その意思はほぼ尊重されます。10歳前後以上であれば意思表明の機会が与えられ、相応に考慮されます。

逆に幼児期(例えば0~3歳)はまだ判断能力が未熟なため、子の意思というよりは一般論として「乳幼児は母親が優先」される傾向があります。もちろん絶対ではありませんが、子どもが十分な年齢の場合は子の希望に沿う形で決定されやすいことを念頭に置きましょう。

養育意欲と愛情・これまでの監護実績

子どもへの愛情の深さや、これまで主体的に子育てに関わってきた実績も判断基準です。

裁判所は「これからしっかり育てます」という意気込みだけでなく、過去にどれだけ子どもをケアしてきたかを重視します。日常的な食事の世話や送り迎え、学校行事への参加、病気の看病など、積み重ねた実績がある親は信頼感が高まります。

「監護の意欲」として子への深い愛情や献身ぶりを具体的に示すことが重要です。

例えば、子どもとの思い出の写真や行事参加の記録、育児に関する知識習得の努力などもアピール材料になるでしょう。

養育能力(心身の健康・経済力・サポート体制)

子どもを安定して養育していくための親の資質や環境も吟味されます。親の年齢や心身の健康状態はもちろん、収入や職業の安定性も考慮されます。

経済力が極端に乏しい場合や住居が不安定な場合、子育てに困難が予想されるため不利になりえます。

ただし収入が高ければ必ず有利というわけではなく、あくまで子どもに不自由なく生活させられるかという観点です。加えて、祖父母や親戚など周囲のサポートが受けられるかもポイントです。

シングルで仕事を抱えていても、実家の両親が育児を手伝える状況なら評価が上がるでしょう。

自分の健康管理に努めたり、仕事と育児の両立計画を示したりすることも大切です。

住環境・教育環境の適性

子どもが暮らす住居や周辺環境も見られます。十分な生活スペースがあるか、衛生的か、安全な地域か、といった点です。学校や保育園への通いやすさ、転校の有無も子どもの負担に関係します。

基本的には子どもにとって慣れ親しんだ環境を大きく変えないことが望ましいため、現在の学校区から離れない方が有利となる場合があります。

兄弟姉妹がいる場合は兄弟不分離(できるだけ兄弟を同じ家庭で育てる)の考慮もあります。

例えば子ども2人のうち兄は父、妹は母…と分かれるのは望ましくないため、兄弟姉妹の関係性も踏まえて決定されます。

もう一方の親との関係維持への配慮:

現代の家庭裁判所の傾向として、監護者に指定する親にはもう一方の親との面会交流を適切に保障する姿勢も求められます。

一方の親が子どもを独占し他方との交流を拒むような姿勢だと、子の福祉に反すると見られることもあります。逆に、相手に対する恨みから子どもを会わせないようにする親より、子どものために相手とも交流させようとする親の方が子の幸せを第一に考えていると判断されやすい傾向があります(これを「面会交流の許容性」と呼びます)。

もちろん相手によるDVや虐待があれば話は別ですが、そうでない限り子どものために柔軟に対応できるかどうかもチェックポイントです。

以上のような点を総合的に評価し、家庭裁判所は「子どもの幸せをより実現できる方」を監護者として指定します。

そのため、監護権者になりたい側は上記のポイントを踏まえて主張・立証を行うことが大切です。

具体的には、「自分がこれまでこんなに子どもを大切に育ててきた」「これからも安定した環境で育てられる」「子どもの気持ちを尊重しているし相手とも協力する意思がある」等を、書面や証拠でしっかり示すよう心がけましょう。

 

審判結果に不服がある場合の対応(抗告)

家庭裁判所の審判(決定)に対し、どうしても納得がいかない場合は上級の裁判所に不服を申し立てることができます。これを「即時抗告」といいます。

即時抗告は通常、審判書の送達を受けてから2週間以内に行わなければなりません。

申立て先は審判を行った同じ家庭裁判所ですが、その後の審理は高等裁判所が書面審査を行います。

手続きとしては、家庭裁判所に「即時抗告申立書」を提出し、高等裁判所で原審判のどの点が不服かを審査してもらいます。

高等裁判所は審判の内容を見直し、必要があれば取り消しや変更をしますが、実務上は原審(家庭裁)の判断が維持されることも少なくありません。

特に監護者指定のような事実関係の評価が重視されるケースでは、高等裁判所も家庭裁判所の調査結果や判断を尊重する傾向があります。そのため、即時抗告すれば必ず結果が覆るとは限らない点に注意が必要です。

即時抗告の結果、それでも不服が残る場合にはさらに最高裁判所に特別抗告という手段も理論上はありますが、監護者指定のような家事審判事件では最高裁まで争われることは稀です。

多くの場合、高等裁判所での判断が最終的な結論となります。

一旦確定した審判内容(または調停調書の内容)は、両親ともにその内容を遵守しなければなりません。

どうしても状況にそぐわない場合は、時間を置いて事情変更を理由に再度申し立てる(例:親権者変更の申立て等)ことも考えられますが、子どもの生活の安定を優先する裁判所は頻繁なやり直しを好まないため、慎重に判断しましょう。

実務上のアドバイス・注意点

最後に、監護権指定審判の申立てを検討するにあたっての実務的なアドバイスや注意点をまとめます。離婚を考えている親御さんがスムーズに手続を進め、子どもの幸せを守るために以下のポイントもご参考ください。

離婚調停と同時に申し立てることも可能

離婚自体についての調停(離婚調停)を起こしている場合でも、監護者指定の調停を別途同時に申し立てることができます。

実際、親権や監護をめぐって対立が激しいケースでは、離婚調停と監護者指定調停が並行して進むこともよくあります。

同時申立てのメリットは、離婚調停の場で親権について折り合いがつかない場合でも、先に監護者指定の審判で結論を出せる点です。

監護者を早期に確定させておけば、その後の離婚協議もスムーズに進む可能性があります。

反対に、一緒に申し立てなかった場合でも、離婚調停の途中で必要と感じたら監護者指定を追加で申し立てることも可能です。いずれにせよ、離婚と監護の問題は密接に関わるため、同時進行を検討する価値があります。

特に別居中で子どもの取り合いになっている場合は、離婚成立を待たず早めに監護者を決めておく方が子どもの生活が安定します。

 

証拠と記録の備え

子どもの監護者指定を有利に進めるには、日頃から育児に関する記録や証拠を残しておくことが役立ちます。

例えば、育児日記や子どもとの写真、学校からの通知表・連絡帳、通院記録など、自分が子どもの面倒をしっかり見てきた証拠になります。

離婚話が出る前からこうした記録を整理しておくと、いざという時に説得力のある主張ができます。

また、相手方による問題行動(DVやネグレクト等)がある場合も、その証拠(診断書や録音、SNSでのメッセージなど)を確保しておきましょう。

家庭裁判所は提出された証拠によって判断するため、主張したい事実は客観的資料で裏付けることが大切です。

子どもの気持ちを第一に

親として自分が子どもと離れたくない気持ちは当然ですが、最終的に重要なのは子どもの幸せです。

調停委員や裁判官もその点を注視しています。自分本位な言動(例えば「相手を懲らしめるために子どもを渡さない」といった発言)はマイナスに働きます。

反対に「子どもにとって何がベストかを考えている」という姿勢は信用につながります。場合によっては子どもの心理面をケアするため、児童心理の専門家やカウンセラーの助言を得るのも有益でしょう。離婚による子どものストレスにも配慮し、子どもの声に耳を傾ける姿勢を持ち続けてください。

自力救済の禁止

前述の通り、別居時に子どもを片方の親が連れ去った場合でも、もう一方が力ずくで奪い返すようなことは避けましょう。

これは法律上「自力救済」と言って禁止されており、最悪の場合誘拐罪などに問われかねません。

子どもにも悪影響を与えかねないため、冷静に法的手段で解決することが大切です。

監護者指定や子の引渡しの審判・仮処分といった手続きを活用し、裁判所を通じて安全に子どもを取り戻すようにしてください。

監護権まとめ

 

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弁護士 石井琢磨 神奈川県弁護士会所属 日弁連登録番号28708

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