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婚姻費用の私立学費加算審判事例

 

婚姻費用の私立学費加算ができた事例

神奈川県厚木市にお住まいの女性からの相談で、婚姻費用請求において私立学費の加算が認められた事例です。

婚姻費用については、私立大学、私立高校などの私立学費、塾などの習い事の費用を、算定表から加算して認めるか、全国で争われています。

今回のケースでは、東京高等裁判所まで行き、一定額の増額が認められたという内容です。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.2.15

親権者父による虐待

長男(平成15年生)、二男(平成17年生)及び三男(平成19年生)の3人の子がいた家族構成です。

夫婦が不仲となり、別居。同居中から婚姻費用が払われず、婚姻費用分担金の支払を求める調停の申立て。不成立となり、審判に移行した事案。

争点としては、妻側から、私立大学・私立高校、塾費用等の費用加算、夫側から潜在的稼働力による妻の基礎収入加算、有責配偶者からの請求による減額というものでした。

なお、妻側から離婚調停の申立もしていますが、こちらも調停不成立となっています。

 

進学のタイミングと別居

同居中に私立に進学していた場合には、加算が認められやすいですが、本件では、進学の数ヶ月前に別居という事情でした。

別居前に、ほぼ私立への進学は決まっていたものの、確定的ではなかったという事情です。

 

高等裁判所の判断

未払い婚姻費用として、約83万円を認定。

当事者の離婚又は別居状態の解消に至るまでの間、月額約27万4000円を支払うよう命じています。

算定表などの標準算定方式の場合、約22万円だったので、5万円以上は、私立学費を理由に加算されている判断です。

 

潜在的稼働力による収入認定

妻側の収入については潜在的稼働力による認定がされています。

審判時には無職だったものの、調停中は、パートや契約社員として稼働していました。

契約期間満了等によって無職だったものの、婚姻費用算出のための基礎収入を無収入とすることまでは認められませんでした。

夫側からは、潜在的稼働力の主張として、さらに、はるか過去の正社員時代の年収程度を基礎収入とすべきだとの主張がされていました。これに対して、長期間、主婦として稼働し、パート等で働き始めたという経緯や年齢、子供の年齢からして正社員程度の収入を直ちに得られる蓋然性はないと反論しています。

家庭裁判所も高等裁判所も、夫の主張は排斥しています。とはいえ、直前程度の収入を認定したものです。

ここはやむを得ない認定といえるでしょう。

 

私立学費の加算

私立大学、私立高校の学費負担分について、加算を認めています。

夫は、長男の大学進学、二男の私立高校への進学につき、反対したとの事実は認められず、審問調書によれば、現時点ではこれを受け入れているものと推認できるとしています。

過去の学費について、妻の父が捻出していた事実があったものの、当事者双方でその学費を負担することを前提に両者間の分担額を定める必要があり、定めた分担額につき妻の父親がこれを更に負担する(肩代わり又は立替えをする)か否かはその後の問題であるとして、切り離しました。

夫は私立大学卒であり、妻は私立短大卒であることや、長男も私立高校を卒業し私立大学に通学していること等を考慮すると、二男が私立高校に通うことは不合理とはいえないと認定し、私立高校の学費も加算すべきと判断しています。

 

就学支援金修正の排斥

学費をめぐる婚姻費用については、就学支援金による減額の主張が夫側からされることもあります。

本件でも、これを申請すれば認められるはずだとの主張がされ、その分が減額されるべきとの主張がされました。

しかし、高等裁判所はこの主張を排斥しています。

高等学校等就学支援金については、受給をしているとは認められないこと、生徒が家庭の状況にかかわらず安心して勉学に打ち込めるようにする制度であること等に照らし、特に考慮しないこととすると結論づけています。

 

学習塾費用加算の否定

家庭裁判所では認定されたものの、学習塾費用の加算については否定されています。

塾は、その性質上、学校教育とはその必要性が異なるものであり、未だ受験年度でもなく、通塾の必要性につき明らかとなっていないこと、夫がその費用を負担することを含めてこれを受け入れているともいえないこと等に照らし、本件での分担対象とはしないと判断しています。

塾や習い事については、私立学費よりも厳しい判断がされることが多く、なかなか認められにくい内容です。

裁判例で認められている例もありますが、本件のように私立学費と重なってくると、義務者側の負担も大きく、肯定されにくい事情になってきます。

 

婚姻費用前払いの主張

妻が夫の預金口座を管理していて、相当額の出金があるという場合に主張されやすいのが、婚姻費用前払いです。

毎月の婚姻費用の金額の話以外に、相当額の出金がされており、それが別居後の婚姻費用として扱われるべきであるとの主張です。

今回の事例でも、このような主張がされました。しかも、別居前の数年間での出金額について婚姻費用前払いであるとの主張です。

しかし、実態として、婚姻生活の中での外出費用などに使われているものも多く、消費済みであり、婚姻費用前払いではないとの反論をしています。

この出金については、一部は婚姻費用の前払いと認定されています。さすがに、紛争後の出金については、婚姻費用の前払いと認定されることもやむを得ないといえるでしょう。

 

有責配偶者の主張を排斥

夫からは、妻が有責配偶者であるから、婚姻費用は減額されるべきだとの主張がされました。

たしかに、裁判例でも、有責配偶者からの婚姻費用請求の場合、子の養育費部分の請求に限定し、有責配偶者分の請求を制限することもあります。信義則上、請求できないという理論などで制限することが多いです。

ただ、有責性の内容によります。

不貞行為などの明らかな有責性の場合には、このような主張も通りやすいですが、今回のケースでは、そのような主張でなく、別居や直前の言動を示す主張にとどまりました。

裁判所は、夫の主張は、主に別居直前の夫婦間(及び家族間)のやりとりを取り上げるものであるところ、別居に至る原因はこれより遡って生じるのが一般。そして、妻は、別居の原因は夫による暴言、暴力及び迷惑行為にあり、未成年者らが夫に対して悪感情を抱いていたとすれば夫の長年の言動が原因であるなどとして、妻は有責配偶者ではないと主張。夫はこれを争っているものの、本件記録によっても不合理であるとは認められないから、結局、別居に至ったことについて、相手方が有責配偶者であると認めるには足りないと結論づけています。

 

私立学費加算のポイント

婚姻費用や養育費の争いで、算定表からの私立学費分の加算を認めてもらう最大のポイントは、進学に対する相手の承諾です。

相手が承諾していたなら、負担を認めていたことになるので、加算も認められやすくなります。

審判では、この立証をしっかりすべきです。

進学がいつ決まったのか、相手に対して、どのような話がされたのか、何らかの関与があったのかを示すことになります。同居中に進学が決まったのであれば、そのタイミング等を主張していくことになります。

夫のような負担者側からの反論としては、承諾していないのであれば、積極的に反対しておく必要があります。そうしないと、消極的な承諾があったものとみなされやすくなってしまうでしょう。

承諾以外のポイントとして、本件でも触れられていますが、夫婦双方の学歴などもあげられます。

承諾を最大の争点としつつ、これらの点も漏れなく主張はしておくべきといえます。

 

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