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不貞慰謝料、高裁裁判事例

 

不貞慰謝料の減額和解事例

交際相手の夫から不貞慰謝料の裁判を起こされ、一審で200万円以上の支払を命じられた後、控訴、高等裁判所の弁論期日があった後に依頼があった事件です。

交際相手(妻)も利害関係人として参加し、最終的には150万円を連帯して支払う内容での和解が成立しています。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.8.18

離婚調停の申立内容

夫から、妻の不貞相手である男性相手に不貞慰謝料、探偵費用などの損害賠償請求がされた事案です。

男性は、関係自体は争わず、交際時には婚姻関係は破綻していたとの主張をしていました。

地方裁判所では、この主張を排斥し、205万円の支払を命じる判決が出されていました。

控訴し、高等裁判所での弁論期日後に、ジン法律事務所弁護士法人への相談があり、控訴審の途中から代理人として受任し、裁判活動をしたものです。

裁判の途中からの参加のため、裁判期日でどのようなやりとりが記録に残っているのか、期日調書を含めて、一般財団法人司法協会で謄写をしています。

 

婚姻関係破綻の主張

婚姻関係は、遅くとも、相談者らが交際を開始した時点で、既に破綻していたと主張しています。

そうであれば、不貞を原因として、慰謝料の支払義務を負うことはないことになります。

その理由として、夫による暴力・暴言がありました。


夫は、妻が妊娠中から、妻に対し、暴力をふるうようになったとのこと。

妊娠中の妻を突き飛ばすなどの暴力ががあり、妻は、お腹の子が大丈夫か心配になり、かかりつけの産婦人科を受診した記録もありました。

 

他にも、髪を引っ張る、投げ飛ばす等の暴行を加え、左手首、右膝、腰等を負傷。

110番通報し、警察が現場臨場する事態にもなった記録が残っています。

他にも、頭部を殴打する暴行を加え、左頸部痛、眩暈の症状が出た診断もされています。

 

暴行だけではなく、暴言も。
「バカ」「死ね」「帰ってくるな」「お前なんかいらない」等の台詞は頻繁に。

長男に対し「お母さんはバカだから、パパは仕方なく殴るんだよ」などの発言も。

 

 

他の男性関係の主張

妻には、以前に別の男性関係の問題もありました。

その関係は1年程続いていたとのこと。同男性との子も妊娠、中絶手術を受けた事実もありました。

それ以外に、別の男性とも交際していたとのこと。

夫と妻の性的繋がりが弱く、他にも異性関係があったという事実は、婚姻関係が破綻していたことを推認させると主張しています。

 

破綻生活の実態の主張

婚姻関係が破綻していたとされるには、生活実態も重要です。

他の男性との交際関係以外に、夜は知人と飲み歩いたり、ホテルに宿泊するなど自宅にはあまり戻らないような生活だった点を主張しています。

一応同居は続けていたものの、殆ど顔を合わせない生活でした。

たまに顔を合わせる場合でも、育児で最低限必要な事項の伝達を除いては、殆ど会話を交わさないようになっていたとのこと。


殆ど自宅には帰らなくなっており、自宅に戻るのは私物を取りに行ったり、毎月の生活費を手渡したりという用事のある場合に限られていたとも主張。

帰宅した際も、夫や長男が就寝している寝室とは別の部屋で仮眠をとる程度で、滞在時間は長くはなかった点にも触れています。


家事・育児と婚姻関係破綻

妻は殆ど自宅に帰らない状態であり、家事・育児は余り行っていなかった様子でした。

妻の母などが、自宅にいることになっていたため、家事・育児は母親任せの状態。都合がつかない場合は、ベビーシッターを頼むこともありました。

母は、夫婦関係の悪さを心配して、自宅のある他県から東京まで定期的に来ざるを得ない状況。

児童相談所にも通報されるなどしていた状態でした。

 

家計と婚姻関係

収入は各自で管理している状態でした。夫婦間で相手ににどれ位の収入があったのか知らない状態だったとのこと。

どのように家計をやり繰りしていたのかも把握せず。

妻は、出産後、育児休暇期間中についても、夫から生活費を手渡されたことはないと述べていました。

 

このように、複数の事情を主張し、男性が交際を開始した点で、婚姻関係は既に破綻していたものと主張しています。

 

不貞行為の故意・過失

不貞行為によって損害賠償義務があるというには、故意・過失が必要です。

今回の事例では、相談者は交際した際、相手が既婚者であることは知らず、また、知らなかったことにつき過失も存しないから、慰謝料の支払義務を負うことはないと主張しています。

2人は、互いの知人が集まるパーティーで知り合っていました。

妻は、夜は知人と飲み歩いた後、交際相手とホテルに宿泊するような生活を送っていた様子。すなわち、独身女性と同じようなライフスタイルを送っていたように見えました。
また、既婚者であることや子供がいることは告げられていませんでした。

既婚者であることは知らなかったし、同人が既婚者であることを疑わせるような事情も何もなかったことから、過失もないとの主張です。

 

なお、相談者は、交際を開始した当初、自身のインスタグラムに交際を示すような写真や動画を堂々と投稿していました。

既婚者であることを知り、また、既婚者であることを疑わせるような事情を認識していたのであれば、自らの不貞の証拠と捉えかねないものを、不特定多数の者が閲覧可能な状態で公開するはずがありません。

 

女性に嘘をつかれていた

妻は、相談者と交際する前、実際には離婚はしていなかったにもかかわらず、「自分には子どもがいるが、既に離婚している」と述べていました。

「離婚はしているが、子どもの面倒を見るため、子どもと元夫の住むマンションの部屋に通うことがある。自分が実際に住んでいるのは、同じマンションの別の部屋だが、そちらでは両親と同居している」と説明していました。

妻、相談者から「自宅に行きたい」と言われた場合に、「独身であるにもかかわらず、自宅に上げることができない事情」を説明する必要が出てくるため、「別の部屋での両親との同居」という嘘を重ねていたものでした。

 

 

探偵・調査費用と不貞慰謝料

不貞慰謝料の裁判では、探偵費用、調査費用の請求がされることも多いです。

損害賠償請求の中で、損害に含まれるという主張です。

これが認められるかどうか、また、その金額については、ケースバイケースです。

判断にバラツキがある内容です。特に、調査の必要性があるかどうかがポイントにされることが多いでしょう。

 

今回、原告側は、不貞行為を立証し、損害賠償請求するために必要不可欠な費用であったとして、自らが依頼した探偵事務所の調査費用約80万円を請求してきていました。

しかし、探偵事務所の調査費用は、当然に損害として認められるものではなく、裁判例の結論も分かれています。

例えば、岡山地方裁判所平成19年10月5日判決(判タ1278号61頁)は、「本件での興信所の調査費用は、必ずしも支出せざるを得なかった費用とはいえず、本件不法行為と相当因果関係にあるとはいえない」として、調査費用の請求を否定しています。


仮に、調査の必要性が認められる場合には、相当額の調査費用の請求が肯定されるとしても、本件においては探偵事務所に調査を依頼する必要性は存しなかったのであるから、同費用の請求は否定されるべきと主張しました。


まず、探偵事務所を依頼した時点で、相談者の氏名をインターネットで検索すれば、ホームページから、住所・電話番号等にたどり着ける状態でした。

また、探偵事務所への依頼前から、相談者のインスタグラムのアカウントは把握されていました。

インスタグラムのプロフィール画面には、連絡先としてメールアドレスも記載されていました。

インスタグラムのアカウントは、当時から1万人以上のフォロワーがおり、事業にもインスタグラムを利用していることから、アカウントは簡単に削除されてしまう性質のものではありませんでした。

連絡先は容易に把握可能だったものであり、探偵事務所に依頼せずとも、損害賠償請求するための情報を取得することができたと主張しています。

さらに、インスタグラムの「特定商取引法の基づく表記」欄には、本名、住所及び携帯電話番号が記載されていました。

したがって、本名・住所を明らかにするため、探偵事務所を依頼する必要性は全くなかったといえます。

探偵事務所に調査を依頼する必要性は認められず、調査費用の請求は否定されるべきでした。

 

 

婚姻関係破綻と夫婦間のやりとり

婚姻関係破綻の主張が出された場合、配偶者側の反論として、夫婦間のやりとりの証拠が出されることがあります。

LINEなどのメッセージのやり取りがある場合に、この画像が証拠提出され、円満な夫婦関係だったと主張されるパターンです。

今回も、夫婦の間で交わされた携帯電話のメッセージが証拠提出されています。

ただし、同メッセージでは、帰宅する旨を告げているだけだったり、「同居者」の就労状況を確認するための書類作成依頼など、事務的な内容に限られていました。

 

診断書の作成時期

離婚裁判など夫婦間の紛争で、暴力があった場合に診断書が証拠提出されることも多いです。

その作成時期が不自然な場合に、反論がされることも多いです。

今回の事例でも、本件が紛争化してから相当期間経過後に作成されたものであり、恣意的な申告に基づいた、事実と異なる記載がなされている可能性があるため、信用すべきでない等と主張がありました。


しかし、医師は当時のカルテを参照のうえ診断書を作成したものであって、受診から相当期間経過後に作成されたからといって恣意が入り込む余地はないのが通常です。

医師が虚偽の記載をすれば虚偽診断書作成罪に該当しかねないのであって、診断書は十分な証拠価値を有すると判断されるのが通常です。

 


利害関係人と裁判上の和解

高等裁判所での裁判手続の結果、最終的には、妻が利害関係人として参加、連帯して和解金150万円を支払う内容の和解が成立しています。

参加後の和解条項においては、夫と妻との間でも、離婚に伴う慰謝料に関し、本和解条項に定めるもののほか何らの債権債務がないことを相互に確認するとの清算条項が入れられました。

不貞慰謝料の裁判として、妻は当事者ではなかったものの、関連紛争として参加、離婚慰謝料についても合わせて解決したという内容です。

故意・過失がないとして、相談者が賠償義務を負わないとしても、婚姻関係破綻の主張が通らなければ、妻は損害賠償義務を負うことになります。一連の紛争を合わせて解決するという意味で、このような解決となりました。

婚姻関係破綻の主張は、裁判例を見ても、なかなか通りにくい主張となります。

 

なお、このような利害関係参加の際には、裁判所への事前相談のうえ、参加申請書を提出します。


利害関係人参加申請書です。。

その際、頭書事件の和解手続につき、下記の者を利害関係人として参加させたく申請いたしますとして、参加者の記載をして提出します。

 

 

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